ヨーロッパを中心としたプレジャーボートのトレンドを知るための大きな指標となる「ヨーロピアン・パワーボート・アワード2024(European Power Boat Award)」の各部門のウイナーが発表された。
「Up to 8m」、「Up to 10m」、「Up to 14m」、「Up to 20m」というサイズ別のカテゴリーに加え、長距離航海向けのモデルを対象とした「Longrange」、世界的に人気が高まるマルチハル部門の「Powercats」、世界的な脱二酸化炭素の流れの中で注目を集める「Electric」と、バラエティーに富んだ顔ぶれが並ぶ。
以下、各部門のウイナーを紹介していくことにしよう。
また各部門にノミネートされたモデル名も掲載している。モデル名をクリックすると各社のウェブサイトにリンクしているので、是非ご覧いただきたい。
(文=舵社/安藤 健)
※タイトル写真はAZIMUT MAGELLANO 60
【Up to 8m部門】
IBIZA 601
イビザ601
Ibiza Boatsは、創業から三十余年の歴史を持つノルウェーのボートビルダー。プレーニングスピードが低く、トップスピードでも安定した走りを実現していることを特徴としている。ラインアップには、全長6.1mから9.11mまでオープンタイプの7モデルのほか、箱型のパイロットハウスを備えた「EXPLORER」というモデルも別にそろえている。
今回ウイナーとなった「601」は、気軽に楽しめるデイボートという性格。当然ながら価格や維持費などコストを抑えることが可能で、エントリーユーザーをターゲットとしている。
船外機仕様(50~60馬力)がスタンダードだが、これとは別に電動推進機を搭載した「601EL」も用意。より環境に対して優しいモデルといえ、北欧の美しい島々が浮かぶ中をクルージングするには最適のモデルといえそうだ。
【SPEC】
●全長:6.1m
●全幅:2.25m
●乾燥重量:1,050kg
●船外機:50~60馬力
(問い合わせ)
Ibiza Boats
https://www.ibizaboats.no/en/
※その他のノミネート艇
●BMA X2333
●Lilybaeum Levanzo 25
●Nordkapp Airborne 6.3
●Northmaster 760 Cruiser
【Up to 10m部門】
SEA RAY SLX 260
シーレイSLX260
シーレイ(Sea Ray)は、エクスプレスクルーザーでおなじみのアメリカのブランド。その最新モデルの一つである「SLX 260」が、Up to 10m部門のウイナーに輝いた。洗練されたデザインは、いかにもシーレイらしい仕上がりとなっている。
船上のスペースを最大限に活用すべく、従来のモデルからコクピットのレイアウトを一新。使い勝手のよさそうなシートレイアウト、シームレスに随所に組み込まれたストレージ類、そして高級感あふれるファブリックがあしらわれ、これまでとはまた違った一艇を作り上げている。
【SPEC】
●全長:7.85m
●全幅:2.59m
●乾燥重量:2,752kg
●燃料タンク:284L
●清水タンク:53L
●エンジン(船内外機):MerCruiser 6.2L MPI ECT Bravo Three with DTS(350hp/261kW)
(問い合わせ)
アインスAリゾート
https://www.eins-a.jp/
※その他のノミネート艇
●Navan C30
●Parker 100 Sorrento (Askeladden C97)
●Ranieri Next 275 LX
●Sterk 31 RC
【Up to 14m部門】
MAREX 440 Gourmet Cruiser
マレックス440グルメクルーザー
マレックスボート(Marex Boats)は、ファミリークルーザーを専門に手掛けるノルウェーのボートビルダー。1973年創業と、50年におよぶ歴史を持っている。高品質で定評があり、ヨーロッパや北米、オーストラリアやニュージーランドなど、世界中のマーケットで親しまれている。ちなみに社名は、ラテン語で海を意味する「mare」と、同じく王を意味する「rex」という言葉を組み合わせたものだ(mare+rex=海の王)。
Up to 14m部門のウイナーに輝いたのは、ユニークな名前の「440グルメクルーザー(Gourmet Cruiser)」。ダブルサイズのキッチンとバーカウンターを備え、アフトコクピットには8~10人が食事やバーベキューを楽しめる空間が広がっている。この広いアフトコクピットには、同社の意匠である「Smart Canopy」を備え、すばやくエンクロージャーで囲むことが可能。短い夏はもちろん、寒い北欧の冬でもキャビンライフを楽しむことができるだろう。
【SPEC】
●全長:13.70m
●全幅:4.27m
●喫水:1.00m
●重量:13,000kg
●燃料タンク:595L×2
●清水タンク:780L
●エンジン:(スターンドライブ)ボルボ・ペンタD6-440 DPI(440hp)×2/(ポッドドライブ)ボルボ・ペンタD6-IPS650(480hp)×2/(Vドライブ)ボルボ・ペンタD6-480 V-Drive(480hp)×2
(問い合わせ)
Marez Boats
https://marex.no/
※その他のノミネート艇
●Bavaria SR 33
●Beneteau Antares 12
●Fim Regina 440
●Frauscher 1212 Ghost
【Up to 20m部門】
AZIMUT MAGELLANO 60
アジムット・マゼラーノ60
ラグジュアリー・モーターヨットの世界で、圧倒的な存在感を放つイタリアのアジムット(Azimut Yachts)。その人気シリーズの最新モデルとして加わったのが、Up to 20m部門のウイナーとなった「マゼラーノ60(Magellano 60)」である。
ゆったりと海旅を楽しむトローラースタイルのモーターヨットで、低速域での航行性能を重視しながらも、一方では最高速度25ノットでの航行も可能。船内には3つのキャビンとバスルームを備え、ゆとりの時間を過ごせるはず。トランサムの大半をガラス張りにするなど、滞在中の視界にもこだわったデザインも注目すべきポイントだ。
【SPEC】
●全長:18.47m
●全幅:5.15m
●喫水:1.37m
●排水量:34.92t
●燃料タンク:3,650L
●清水タンク:740L
●エンジン:Man i6(730hp/536kW)×2
(問い合わせ)
安田造船所
https://www.yasuda-shipyard.com/
※その他のノミネート艇
●Aprea Lancia 52
●Prestige F4
●Sargo Explorer 45
●Sunseeker Superhawk 55
【Longrange部門】
OMIKRON OT 60
オミクロンOT60
ギリシャのボートビルダーであるオミクロンヨット(Omikron Yachts)。もともとは1960年代から1990年代まではOlympic Yachtsとして、実に2,000隻以上の艇を建造してきた歴史がある。2019年に、この造船所を全面的に改修し、最新の設備が投入されて生まれ変わった。
Longrange部門のウイナーとなった「OT-60」は、現代的なデザインが印象的な一艇。ハウス全面を大きなガラスが覆い、船内にいても圧倒的な開放感を感じられるに違いない。
また、なんといってもポイントは連続航行性能。"Juan K"ことファン・コーヨムジャンが設計した船体は、エコクルージングを標榜するもので、8ノットで連続1,000海里を無給油で走ることが可能となっている(8ノットでの燃料消費量:1.25L/1海里)。地中海をアイランドホッピングするには、ぴったりのモデルだといえよう。
【SPEC】
●全長:18.41m
●全幅:6.06m
●喫水:0.86m
●軽荷排水量:20t
●燃料タンク:1,200L
●清水タンク:600L
●エンジン:150hp×2もしくは250×2
(問い合わせ)
Omikron Yachts
https://www.omikronyachts.com/
※その他のノミネート艇
●Greenline 58 Fly
●Mylius 62
●Vanton QS 45 CC
●Steeler 50 TA
【Powercat部門】
LEOPARD 40 Powercat
レオパード40パワーキャット
ますます世界のマーケットで存在感が高まるマルチハル。今回のアワードではPowercat部門に5艇がノミネート。「レオパード40パワーキャット(Leopard 40 Powercat)」がウイナーの座を勝ち取った。
ビルダーのLeopard Catamarans(アメリカ)は、セールとパワーの両方を手掛けるカタマラン専門ビルダーで、パワーボートは40、46、53の3モデルをラインアップしている。
40フィートクラスとしては最大級のフライブリッジを備え、快適なクルージングを楽しめるはず。巡航速度は17ノット、最高速度は20ノット以上とのこと。カタマランならではの圧倒的な広さの居住スペースにも注目したい。
【SPEC】
●全長:12.19m
●全幅:6.61m
●喫水:1.1m
●排水量:13,829kg
●燃料タンク:1,400L
●清水タンク:640L
●エンジン:250hp×2(オプションで370hp×2、370hp×2)
(問い合わせ)
Leopard Catamarans
https://www.leopardcatamarans.com/
※その他のノミネート艇
●Aquila 42
●Four Winns TH36
●Tesoro T 38
●YOT 36
【Electric部門】
X SHORE 1
Xショア1
スウェーデンのXショア(X Shore)は、電動ボートの開発を2016年からスタート。2018年には最初のプロトタイプを完成させ、2020年からEelex 800という電動ボートの市販をスタートした。
そんな同社の最新モデルが「Xショア1(X Shore 1)」。125kWの電動モーターを搭載し、最高速度は30ノット。電動ボートの開発における命題の一つとなっている連続航行距離は、実に50海里とのこと。"水の上で昼も夜も過ごす"ことをコンセプトにしており、アフトコクピットはフルビームのサンベッドにすることも可能で、床下には二人が寝られるキャビンも備えている。
オープンタイプのほか、Tトップを備えた仕様も用意されている。
【SPEC】
●全長:6.5m
●全幅:2.23m
●喫水:0.65m
●重量:1.7t
●電動モーター:125kW
(問い合わせ)
X Shore
https://xshore.com/
※その他のノミネート艇
●Capoforte SQ 240 I
●Edorado 8S
●Kaebon Elektroboot Eins
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