舵オンラインを運営する舵社では、世界のマリン産業に関する専門媒体「IBI(International Boat Industry)」と提携している。今回は、2023年7月13日付けで配信されたニュースの中から、世界初のリサイクル可能なプロダクションヨット「eco racer 30」に関するニュースをお届けしよう。(舵オンライン編集部)
「rComposite」の特許を所有しているイタリアのノーザン・ライツ・コンポジット(NLcomp)社は、ジェノバで開催されたジ・オーシャンレースの最終レグで、世界初のリサイクル可能なプロダクションヨット「Ecoracer 30(エコレーサー30)」を発表した。
エコレーサー30は、レーシングヨットの分野で豊富な経験を持つマッテオ・ポリ(Matteo Polli)によって設計された全長9.15m(30ft)のヨットである。ポリは、デビュー戦でORC世界選手権を制したIY9.98や、ORC世界選手権で2連覇を達成したグランドソレイユ44など、数々のプロジェクトを成功に導いてきた。
今回のエコレーサー30のプロジェクトは、「Boat Builder Awards 2022(ボートビルダー・アワード2022)」において、リサイクル可能なボートの開発に取り組んだことが高く評価され、「エコ・フォーカス・ボート・オブ・イヤー」を受賞している。
現在、2号艇の建造作業が進められており、年末までにさらに2艇、来年には4艇が建造される予定だ。NLcomp社では、8艇のフリートがそろい次第、2025年夏に「エコレーサー・セーリングシリーズ」をスタートする予定である
現在、グラスファイバー製ボートの約95%は、そのライフサイクルの終わりに廃棄されていると推定される。今から4年前、NLcomp社はグラスファイバー製ボートの廃棄問題の解決策として、特許を取得した素材「rComposite」を開発した。
NLcomp社が提案するソリューションは、熱硬化性樹脂を熱可塑性マトリックスに置き換えるという、シンプルだが画期的なものだ。熱硬化性樹脂を熱可塑性樹脂マトリックスに置き換えることで、原材料を回収し、ライフサイクルの終わりにリサイクルできる可能性が広がる。さらに、天然繊維と合成繊維を組み合わせ、再生炭素繊維も使用することで、ボートの建造段階においても環境への負荷の低減を実現している。
エコレーサー30は、2022年のイタリア・スポーツボート選手権で優勝したエコレーサー25(上写真)で得た経験を基に開発され、持続可能性とパフォーマンスが両立できることを証明している。
セールはOne Sails製の4T Forteを採用している。これは、現在マーケットで唯一のリサイクル可能なセールだ。このセールは簡単にリサイクルすることができ、キャンドルの部材やしおり、サングラスなどのアクセサリーの材料として再利用することができる。
(文=Ricard Bracons /IBI 翻訳・補足=舵社/安藤 健 写真=Northern Light Composites)
Ecoracer 30
●全長:9.15m
●全幅:3.03m
●排水量:1,850kg
●喫水:2.30m
●セール面積:メイン35.5㎡、ジブ25.0㎡、ジェネカー105㎡
(問い合わせ)
Northern Light Composites
https://ecoracersailing.com/
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