イタリアのスーパーカーメーカー、アウトモビリ・ランボルギーニが、先日モナコで開催された「モナコ・ヨット・ショー」で新型ヨット、「テクノマール・フォー・ランボルギーニ・101FT」のスケールモデルを発表した。これはイタリアン・シー・グループとのコラボレーションによって誕生したもので、この両社は2020年にも「テクノマール・フォー・ランボルギーニ・63」と命名された、いわゆる水上のランボルギーニともいえる高級ヨットを63隻の限定で建造するプランを発表した経緯がある。
今回発表された「テクノマール・フォー・ランボルギーニ・101FT」は、そのネーミングが物語るとおり全長が101フィート(約30メートル)に達するモデル。ランボルギーニのスーパーカーと同様に、それを操縦する時に唯一無二の体験を提供することを開発目標とし、イタリアン・シー・グループが誇る、船舶開発におけるエンジニアリング面でのアドバンテージと、ランボルギーニの秀逸なデザイン性が大きなシナジー(相乗効果)を生み出しているのは、誰の目にも明らかなところだろう。
「テクノマール・フォー・ランボルギーニ・101FT」のデザインは、ランボルギーニのチェントロ・スティーレ(スタイリング・センター)の主導で行われた。「ジャッロ・クリウス」と呼ばれるイエローの船体色は、今年の8月にアメリカのカリフォルニア州モントレーで世界初公開されたランボルギーニのフユーオフ・モデル(きわめて小さな生産台数を想定した限定車)、「フェノメノ」のそれに共通するもので、エクステエリアのライン構成や前後の灯火類もフェノメノのデザインから着想を得ている。
一方最大で9名のゲストが滞在可能だというキャビンは、ランボルギーニの最新ハイブリッド・スーパーカー、「テメラリオ」から多くのモチーフを受け継ぐことで完成されている。あらゆるディテールにはランボルギーニが持つDNAが反映されており、その端整な作り込みにもまた最高級のクラフトマンシップが感じられる。
搭載されるエンジンは3基の「MTU 16V 2000 M96L」型ディーゼルで、最高出力はトータルで7600ps。各々のエンジンにはサーフェイスプロペラが組み合わされ、それによって最高速度で45ノット、巡航速度では35ノットを実現する。ランボルギーニとイタリアン・シー・グループによれば、このきわめて革新的であり、かつこれまでのラグジュアリーの概念を打ち破る新型ヨットは、2027年末にはその第一号艇が進水する予定だという。
前作の「テクノマール・フォー・ランボルギーニ・63」が、高級ヨット市場で大きな成功を収めたことを考えれば、この新作に対しての期待度もまた大きいのは当然ともいえるところ。ちなみに「それは単なるヨットではなく、イタリアの卓越性を象徴する存在なのだ」と、ランボルギーニのCEO兼会長のステファン・ヴィンケルマン氏は、モナコ・ヨット・ショーの場でコメントしている。「テクノマール・フォー・ランボルギーニ・101FT」。それに世界のスーパーリッチから注がれる視線はきわめて熱い。
(文=山崎元裕 写真=Automobili Lamborghini)