スーパーヨットのデザインの最先端を行く|ナウタデザインの世界①

2025.10.02

選ばれしオーナーの夢を具現化するスーパーヨットのデザイン。ナウタデザイン(nauta design)は、その第一人者と呼ぶべき存在だ。
そんな彼らが手がけた作品とともに、憧れの世界を何回かにわけて紹介していこう。

(文=舵社/安藤 健)

◆タイトル写真:全長179.7メートル(590フィート)の威容を誇る、世界最大のモーターヨット〈Azzam〉。2013年進水、その建造価格(当時)は6億ドル(現在のレートで約892億円)ともいわれている。当時のアラブ首長国連邦の大統領であるハリファ・ザイド・ナヒヤン(2022年逝去)によってオーダーされた個人所有のスーパーヨットである
photo by Giovanni Romero

 



海を愛する者にとっての究極の夢──自分の理想を具現化した、世界でたった一つのカスタムヨットを造るということ、それがスーパーヨット(一般的には全長24メートル以上の個人所有のプレジャーヨットを指す)なのであれば、周囲の称賛と憧れを集める成功者の証であり、人生で求める何かという意味での最終到達点であるのかもしれない。

そんなスーパーヨットのデザインの世界で高い評価を得ているのが、イタリアのミラノに拠点を置くナウタデザイン(Nauta Designである。

※上は全長70メートルのスーパーヨット〈T700 Milano〉。
Tankoa Yachts(イタリア)とナウタデザインの初のコラボレーションとなるプロジェクトは、現在進行中。広大なマスターステートルームは80平方メートルあり、プール、ラウンジエリア、ヘリポートを備えたバウデッキへと続いている。
rendering by Tankoa Yachts

 


マッシモ・ジーノ(Massimo Gino/左)とマリオ・ぺドール(Mario Pedol/右)によって1986年に設立されたナウタは、40年におよぶ歴史を重ねる中で、この世界の第一人者と呼ぶべき名声を博するまでになった。
エクステリアとインテリアの双方を手がけ、フォルムと機能、そして独自の美学を融合させたデザインは、一目でそれとわかるものだ。奇をてらったものではないが、時代を超えて愛されるような、タイムレスなデザインとでも言おうか。
photo by Nauta Design

 


ナウタでは、モーターヨットとセーリングヨットの双方を扱っている。また、ベネトウやエクセスといった一般的なプロダクション艇から、スーパーヨットの数々に至るまで、彼らにデザインを依頼する顧客は多岐にわたっている。
極めつけは、なんといっても世界最大のモーターヨットとして知られる全長179.7メートル(590フィート)の〈Azzam〉(建造:Lürssen Yachts)だろう(上の写真)。さまざまな艇を手がける、この多様性こそが、ナウタのデザインの最大の魅力であるのかもしれない。
photo by Giovanni Romero

 


photo by NicoMartinez for Studio Borlenghi


photo by Carlo Borlenghi


photo by Giuliano Sargentini

2023年にはロイヤルハイスマンが建造した全長46メートルのセーリングヨット〈Nilaya〉(ライヒェル・ピューとの共同設計)が、その姿を見せてくれた(上の写真3点)。このスケール感は圧巻。そして息をのむような美しさをたたえている。

 


「重要なのは、自分のビジョンに忠実であり続けること。ヨットにおけるラグジュアリーとは、決してスタイリングだけではありません。オーナーが自然環境にどっぷり浸かれるような、機能的な空間を作ることだと考えています」(マリオ・ジーノ)

※上は全長72メートルのスーパーヨット〈Moon Flower〉
rendering by Wider Yachts

 



Moon flower〉では、近年のトレンドであるビーチクラブを「アイランドビーチクラブ」として進化させ、117平方メートルにおよぶウオークアラウンドテラスを展開。屋内と屋外とがシームレスにつながる、海上の楽園を演出している。
renderings by Wider Yachts

 

※こちらの記事は、雑誌『Sea Dream』Vol.40の記事を再編集したものです。

 


 

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