月刊『BoatCLUB』の奇数月号で連載している「孤高の釣り人Mr.ツリックのふらっと貸しボートに乗りにきた」では、料理上手な釣り人Mr.ツリックが、関東を中心に全国の貸しボート店を巡り、その地、その季節に合った釣りを楽しむ様子をお届けしています。
今回は、『BoatCLUB』2022年1月号に掲載された「キモパンカワハギをねらうゾ」を一部再編集したダイジェスト版をお届けします。
※取材は2021年10月に実施。記事内に掲載されている写真の内容などは、取材当時のものです。
舞台は葉山
みなさま、こんにちはMr.ツリックです。
さて、今回の取材地は湘南・葉山の葉山釣具センター。東京都心からクルマで1時間チョイのアクセスのよさと、一年を通して営業している貴重なレンタルボート店であります。しかも、湘南の中でも風光明媚な名島群島周りがメインの釣り場で、西を眺めれば富士山と江の島のツーショット。そのうえ、一年中なにかしらの魚が釣れるのだから、文句の付けどころがございませんナ。
本来、道具立てが少なくてすむカワハギ釣り。しかし、ボート釣りではほかの釣りのできるタックルも用意しておくのが常識なので、はからずも物量が多くなる。魚探も持っていきたいし
ボート乗り場まで少し距離はあるが、荷物が多くても砂浜なのでキャリーカートは使いにくい。荷物を下ろしたあとにカートを置く場所がないし、ボートに載せるのもジャマだし
初夏のシロギス釣りを筆頭に、季節によりアオリイカ、マダイ、マゴチ、ヒラメ、アジやイナダ(ブリの若魚)などの青もの、カサゴ、マダコ、カレイなどなど。水温が下がる冬季はカワハギがメインになりますヨ。
そうそう、葉山釣具センターといえばエギングに定評がありますが、その昔、そうですナ20年くらい前でしょうか、そのころまではボートでのアオリイカ釣りといえば、中オモリの先にエギを付けたシャクリ釣りか生きエサ釣りが主流でしたナ。そんなとき、オカッパリのエギのキャスティングに目を付け、いち早くボートからのキャスティングに移行したのが葉山釣具センターだった。そして、いわゆるボートからのエギングでワシが初めてアオリイカを釣ったのもココである。
ここのエンジンボートはヤマハの8馬力付きのSKTパーフェクター13。2021年の春まで、ガタガタだったがかろうじて残っていた純正シートが、とうとう壊れたのか取り外されていた
釣れるのは小物ばかり
ちなみに今回のターゲットはカワハギ。できれば、カワハギ釣りを早々に切り上げ、もちろん十分な釣果を得てからですが、ほかの釣りもしてみたいとエギングタックルも用意してきた。それに、季節的にナブラがたったときのために、メタルジグもタックルケースに忍ばせてきた。あとは、クロダイ落とし込み釣り用のタックル。これでクロダイをねらってもいいが、エサを替えればフカセ釣りみたいなものだから、さまざまな魚が釣れるのだ。さらにタコテンヤも持ってきた。
こんな感じでいろいろ用意はしてきたが、どれも出番はなかった。なんせ主役のカワハギが思うように釣れないんだもの。
出船前に店主がイラストマップで、釣り場や注意事項などを詳しくレクチャーしてくれる。風向きや釣りモノごとのポイントも書き込んでくれるので沖へ持ってゆくととても役立つ
当日の使用アイテム。釣り場の水深が10~20メートルだから20~25号の軽めのオモリが釣りやすい。エサのアサリは、一日中マジメにカワハギを釣るなら一人1ビンが目安ですゾ
出船前に店で店主に聞いてきた、テゴ島の横で鳥居の中に裕次郎灯台(葉山灯台)が見える場所でアンカリング。1投目は3本のハリに付けたエサがすべてなくなり、とりあえずポイントはミスってない。それから、2投目はなんだか判別不明のアタリを取ったらウマヅラハギとキタマクラのダブル。まぁまぁしようがない。もしかして今日はイケルのではないか? と思ったが甘かった。その後は、フグの猛攻で思い出したように小物が釣れるのみ。あっちにウロウロ、こっちにウロウロしているうちに昼をすぎ、あっという間に終了の時間。
カワハギ釣りはサオの下にいれば釣れると思っているため、この日はカワハギのいる場所にたどり着かなかったのでしょう。いつもは「サソワナイアワセナイ」がオイラのカワハギの釣り方なのですが、今回は、タタイたりサソッたりハワセたり、カワハギ釣りらしいことをしたけどダメでしたナ。あぁ、サソワナイアワセナイっていうのは言葉のアヤで、少しは誘うしアタリを取ったりはします。要するにタタイたりシャクッたり、ビシッとアワセたりしないってことです。
今回の釣行マップ(神奈川県・葉山町)
※「海釣図V」(マップル・オン)より転載
釣れないときのサダメ。何度移動をしたことだろうか。船外機操作をしたのは一度だけで、アンカーの上げ下ろしはすべてワシがした。おかげでツラだけでなく、手の皮も厚くなった
ボートに装備されている小型のダンフォース型のアンカーは根掛かりしやすいので要注意。アンカーは投入しないで静かに手で下ろすこと。それでも根掛かりするときはするけど
1投目にエサが盗られ、2投目にウマヅラハギとキタマクラの一荷。こりゃ今日は楽勝かと思われたスタート時点。このときは、その後に待ち受けるフグ地獄を知る由もない
エサの付け方
そういえば、エサになるアサリは、自然界ではまずカワハギが口にしないモノですよネ。でも、カワハギの定番エサとして、ずいぶん昔から利用されている。こういう意味の熟語みたいなのがあったけどなんでしたっけネ。忘れちまったゼ。まぁ、いいや。思い出せないのでエサの付け方でも説明しておきますかネ。
カワハギ釣りで重要なのは、「1にポイント、2にエサ付け、3、4がなくて、5にキモ和えが食べたい」ですナ。
ポイント選択のミスか、それとも底を攻めすぎたか。トラギスのダブル。もう少し大きければキープするのだけれど
冷たい北東風が強くて寒い。おまけに風で走錨する。そのうち根にアンカーが引っかかって止まるが、その根で釣りたいのに、ボートは何もない砂地の上で停止・・・よって釣れない
基本的な付け方は、まず2本の水管にハリを通して半回ひねり、ベロを縫い差しにしてからキモの中でハリ先を止める。全体的に丸くキレイにまとめるのがコツであります。入れ食いのときでもテを抜かずに、ていねいに付けることが大事。よって、カワハギがバリバリ釣れるようなところでは、3本より2本バリのほうが手返しは早くなり釣果も伸びます。
それから、カワハギの食いが落ちてきたときは、水管を取り外して直接にベロからキモへハリを通すといい。結局、カワハギも人間と同じくキモが好きですからネ。あと、水管を取らずにベロからキモに通して、水管は吹き流しのようにしてアピール度を高める方法もあります。この場合でも、水管だけをとられるということはありません。キモへダイレクトに食いついてきますからネ。
この日の最大サイズの20センチ。それもたったの1尾。これで刺身を作るのは困難を極めるであろう
警戒心の薄いチビカワハギだから、エサが近くにあれば迷わずに飛びつく。当然、いれば簡単に釣れるのだが、望んでいるのはキミたちでなく25センチオーバーなのですヨ
ポイント移動の苦悩
まったくダメダメな釣果なのに、エラソーに釣り方やエサ付けのレクチャーをしてもむなしいだけですナ。今回もツレナイ記事にみなさまを付き合わせてしまって申し訳ナイ。なんだか、エンジンボートよりも手漕ぎボートのほうが釣れるような気がする。
もちろん、気がするだけであって、ソツなく使いこなせれば機動力のあるエンジンボートのほうが間違いなく有利なのだヨ。ところが、その機動力のせいで我慢できずに移動が多すぎたり、意味もなく沖に出たり、ちゃんとその力を発揮できていないんだろうなぁ。
一方の手漕ぎボートは、今までレンタルボート店として営業してきた実績があるので狭いポイントでもそれなりに釣れる。移動がメンドイために、その場で釣り続けるのもいいのかもしれない。ただ、手漕ぎボートでの流し釣りはやっぱ大変だ。まして、2人乗りでの流し釣りはサ。常時、流し釣りをしていると、釣っている時間よりも漕いでいる時間のほうが確実に長いのだからイヤになっちゃいますナ。
さてさて、グチを言ってもしようがない。次回は伊東のアマダイに挑みますか。これまたオデコ臭が強く漂う釣りではありますが。
残念ながら、カワハギは大きくなっても頭の大きさがあまり変わらないため、写真でも小型のカワハギだとすぐに判断できてしまう
須藤恭介(すとう・きょうすけ)
愛称、Mr.ツリック。長年、月刊『ボート倶楽部』の筆者として活躍。現在、同誌に連載中の「孤高の釣り人Mr.ツリックの ふらっと貸しボートに乗りにきた」では、釣りだけでなく、釣果料理のノウハウを弟子に教えている。
(文=須藤恭介[Mr.ツリック] 写真=舵社/宮崎克彦)
今回お世話になった貸しボート店
ほぼ毎日、その日の釣果をフェイスブックで発信している、葉山の貸しボート店。8馬力船外機付きのボートと手漕ぎボートがあり、手漕ぎボートは沖のブイまで曳航してくれるサービス付きも。年間を通じてさまざまな釣りが楽しめる、関東近郊の人気老舗ボート店だ。
[住 所]神奈川県三浦郡葉山町堀内363
[連絡先]046-875-5700
[料 金]4,000円~
[定休日]不定期
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