月刊『BoatCLUB』の奇数月号で連載している「孤高の釣り人Mr.ツリックの ふらっと貸しボートに乗りにきた」では、料理上手な釣り人Mr.ツリックが、関東を中心に全国の貸しボート店を巡り、その地、その季節に合った釣りを楽しむ様子をお届けしています。
今回は、『BoatCLUB』2021年9月号に掲載された「東伊豆のサバじゃまだ早かった!?」を一部再編集したダイジェスト版をお届けします。
※取材は2021年6月に実施。記事内に掲載されている写真の内容などは、取材当時のものです。
ミニボートでの釣り方
みなさま、こんにちはMr.ツリックです。
さて、今回は久方ぶりの東伊豆だよん。たまには、西伊豆とか南伊豆のほうまでいきたいのですが、あちら方面にはレンタルボート店が少ないのですヨ。そのうえ、手漕ぎボートだけだし。まぁ、オイラ的には手漕ぎボートでもなんの問題もないのですが、やはりエンジン付きのボートのほうがラクチンですナ。それに、大きめのボートに乗ると立って釣ることができるのがとてもありがたい。
普段、カートップボートやミニボートなどに乗っている人はわかると思いますが、座ったままロッドを振り回すのはけっこうツライのです。特に、ロッドを常に動かし続けるエギングやジギングがシンドイ。立って釣ることができれば、ティップを足元まで下げることができるのですが、座っているとそれができない。せいぜい、ロッドの可動域は胸元から頭上までだ。それに、下半身の筋力を使うこともままならないので余計に疲れる。
せめて、背もたれ付きのイスでもあれば少しはラクなのだが、手漕ぎボートではFRPむき出しのベンチだけだ。普通の生活では、そんな硬いところに何時間も動かずに座ったままなんてことはまずない。慣れない人は2時間も座っていればケツが痛くなって必ずネをあげる。
それでも、対処法はある。アグラをかくかヒザをくずす感じの姿勢で、とにかく膝頭をヘソよりも低くしていると、オシリの骨が鋭角に座席へ当たらず痛みは和らぐ。まぁ、レンタルボートに好んで乗るようなヒト以外はなかなかそのようなシチュエーションにはならないと思いますが、もしもそんなハメになったら試してみてくだされ。なんつったって、レンタルボートやミニボートに40年乗り続けても、エコノミークラス症候群にならずに済んでいるジジイのアドバイスだ。
国道沿いにある小屋の脇で受け付けを済ます。道の反対側には駐車スペースとトイレがある。複数台のクルマで行った場合はすぐ奥にある有料パーキングへ。平日なら1日300円
ボート乗り場は比較的足場のよいスロープなので安心ですが、冬は長靴が必須アイテム。もちろん、エントリー時は店のスタッフがアシストしてくれる
こちらは、レンタル用のシーアンカー。前回訪れたときにはなかったので、現場2号改は持ってきたけれど出番ナシ。けっして忘れたワケではございません
内田丸におジャマ
おっと、今回は東伊豆の網代(あじろ)です。というところから、いきなりハナシがトンでしまいましたナ。網代はメジャーな熱海と伊東にはさまれた落ち着いた温泉町ですが、レンタルボート釣りエリアとしては昔からの超人気スポットだ。今ほど、タックルや釣法が進化していなかった40年以上昔から手漕ぎボートでマダイが釣れていたのですヨ。貸しボート店も今より多く営業していてにぎやかな港だった。そのころに、「池に浮いているような手漕ぎのボートでマダイを釣りにいってきます」なんて、東京の釣りビトに言うと驚かれたモノです。東京の海には手漕ぎのレンタルボートはなかったですからネ。
さてさて、内田丸さんの2馬力ボートは2年ぶりになるでしょうか。足場のよい港のスロープからエントリーできる数少ないレンタルボート店であります。以前にオジャマをしたときには、なにを釣ったんだっけ。そうそう、ウズワ(ソウダガツオの伊豆方面の方言)でした。その前は魚礁周りを流した覚えがあるけれど、釣果に関してはまったく記憶がない。ということは、ほぼほぼなにも釣れなかったのでしょう。
ワガハイ考案の刺繍カブラ。今回は水深15~40メートルを流したので4号オモリを使用
網代多賀のマンション前の釣り場。カワハギの好ポイントだ。かつて、2時間でアベレージ25センチのカワハギを25尾釣ったことがあった
当初は刺繍カブラを使う予定はなかったので、サンマの切り身もホタルイカもなくて、ケミカルイソメをエサにしていたら、こいつ(キタマクラ)ばかりが食いつく
釣れたエソを切り身にしてみると、ケミカルイソメは取られるが、エソはいつまでたってもハリからなくならないではないか
【今回の釣行マップ(静岡県熱海市)】
※「海釣図V」(マップル・オン)より転載
網代のサバ
そして、今回のターゲットは同行するY男のたっての希望でサバ。いいですな、オデコの可能性がないワケではないが、回遊していればヒット率はかなり高い。それに、いまどきサバも高級魚である。ブランドサバでなくても40センチ超えの丸々太ったモノなど1尾1,000円を超えたりする。ブランドサバともなれば3,000円はしますかネ。
しかし、網代のサバはブランドでないうえに水温の高い時期だ。もとより、脂のノリは期待できない。それでも、せめて40センチ近いサイズが釣れてくれればなんとかなる。なんせ、ワタクシメはお隣の相模湾育ちなので脂の少ないサバは幼少の折から食い慣れておる。むしろ、ほどほどの脂のノリのほうが好みである。ノルウェーサバのみそ煮なんぞトロトロしすぎて口に合わん。でも、30センチ以下のパサパサの夏サバはイヤです。なんとか、そんなチビサバが釣れないことを祈りたい。ちなみに、相模湾は城ヶ島から真鶴半島までなので、網代沖は相模灘になります。
大物が掛かったかと思ったら、エソダブル。全部で10尾くらい釣れたが、エサ用の切り身以外は全部リリース
40センチのマサバ。夏サバですが、塩焼きにすると、したたり燃え上がるくらいの脂はありました
悪条件での釣行
釣り方はジギング。28グラムの軽めのジグを使います。近年は、メンドイから余程のリクエストでもない限りコマセ釣りはしない。釣った魚がコマセ臭くなるのも敬遠する一つの理由だ。それに、当日は15時から車検なのである。コマセ臭いクルマで行くワケにはいかない。
それにしても、静岡県の東伊豆で釣りをして、東京の東のはずれ、千葉との県境付近にあるクルマ屋に15時までにたどり着けるのか。と思うものの、ありがたいことに今の時期は5時からボートに乗れるので、10時までたっぷり5時間釣ってから向かっても間に合うのだ。
当日は、いつ雨が降ってきてもおかしくないような曇天。しかし、台風5号が忍び寄ってきているので、雨が降ろうが車検が降ろうがこの日を逃すと当分、釣りにいけない状況が続くのだ。そんなワケで、6月の末だというのに上下カッパの重装備で出港。
サバの船上処理
①エラの下にある頭部と胴体をつなぐ細い部分には、心臓とエラを結ぶ血管が通っているので、ここを切って血抜きをします。かなりのいきおいで血が飛び出るので要注意
②釣ったサバを二枚におろし、さらに半分に切ってペーパータオルに包む。それを水か海水で軽く湿らせて、塩の入った密閉袋に空気を抜きつつ入れたら、塩を全体になじませる
③サバの沖漬け(塩)、完成。Y男にもお裾分けしたが、間違えて熟成用の骨付きのほうの身を渡してしまった。当日、帰宅後に食べるには、チョイト塩の効きが薄かったかも
ぐでぐでの釣果
手始めに、網代多賀のマンション前のポイントへ来たが音沙汰なし。すぐに、そこからちょいと先にある赤根埼手前の根周りに移動する。サバがダメでもハタかカサゴがヒットしてくれないかと、なんだか発想が逆ではないかと思われるような安直気分でジギングするが当然のスカ。サバねらいでオデコはなんとしても避けなければならない。
そこで、考えたのがハイエナ作戦。ボート乗り場の真沖にはコマセマダイをしている手漕ぎボートが必ずいるハズ。そのコマセに集まったサバのおこぼれにあずかろうなんて、なんとも情けない作戦なのである。しかし、そのおかげでなんとかサバを釣り上げることができた。いやはや終了時間ギリギリでしたナ。
あと、あまりにも釣れなくてふてくされたY男が、メタルジグを海面下30センチにブラ下げてうたた寝していたら、なんとジグのフックにマルイカ(ケンサキイカ)が引っ掛かっていたなんてオマケ付き。当然、マルイカが大好きなオイラは黙って徴収。3日後に刺身で食ったら甘くて最高でしたゾ。
二人でサバ2尾とマルイカ1パイ。なんともぐでぐでの釣果ですが、サバの沖漬け(塩)を作ることができたので満足。帰宅後に食べたのも美味だったけど、やはり2~3日寝かせたほうがウマイかナ。次回はマダイでもねらってみますかネ。
(文=須藤恭介[Mr.ツリック] 写真=BoatCLUB編集部/幸野庸平)
須藤恭介(すとう・きょうすけ)
愛称、Mr.ツリック。長年、月刊『ボート倶楽部』の筆者として活躍。現在、同誌に連載中の「孤高の釣り人Mr.ツリックの ふらっと貸しボートに乗りにきた」では、釣りだけでなく、釣果料理のノウハウを弟子に教えている。
【今回お世話になった貸しボート店】
内田丸には、手漕ぎと船外機(2馬力)付きがあり、さらにそれぞれ2人乗りと3人乗りがあるが、今回は船外機付きの2人乗りボートを借りた。取材は平日だったが盛況で、若い人が多い印象だったゾ。場所に関しては、「内田丸」ののぼりがたくさん立っているからすぐに見つかるはず。
内田丸
[住 所]静岡県熱海市下多賀444 大縄海水浴場隣
[連絡先]090-8860-7488
[料 金]5,000円~
[定休日]1月1日と2日
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