パラオの子どもたちが経験した外洋とOP級レース|「太平洋島嶼国ウィークス」開催

2024.08.09

日本-パラオ親善ヨットレース(2024年3月10日スタート)に参加したパラオの子どもたちが、横浜港で開催された第37回横浜港ボート天国ディンギーヨットレースにも参戦。

これらの報告会が、 太平洋島嶼国ウィークスの一環として7月9日に行われました。 その報告会の場で、月刊『Kazi』で「海ガール」として連載企画を担当する矢口あやはさんが「公開取材」と銘打って、壇上で公開インタビューの司会を務めました。そのレポートです!(編集部)

 

メインカット | photo by Tsuyoshi Nakamura | kazi | 自身の連載が掲載される『Kazi』誌を片手に登壇準備をする海ガールの矢口あやはさん

 


12日間の帆船航海で子どもたちが感じたこと 

(文=矢口あやは)

 

「夜のデッキで星を見るのが好きでした」「イルカにシャチ、珍しい海洋生物にも会えたんです」「おいしかった船内の料理? 全部です!」と、楽しかった体験をふりかえる一方で、「波間に冷蔵庫が浮かんでいて・・・。とても驚きました」。

ステージ上でこう語ったのは、帆船〈みらいへ〉に乗り、横浜からパラオまでの12日間の航海を成し遂げた子どもたち、パラオキッズのみなさんです。

 

パラオキッズたちと関係者

 

笹川平和財団(東京・港区)は、「第10回太平洋・島サミット」の開催にあわせて、太平洋島嶼国の閣僚や専門家ら約50人を招聘。ともに海洋事情を考える機会として、7月8日から19日まで「太平洋島嶼国ウィークス」を開催しました。 イベントの2日目となる9日には、「OPRI海洋人材育成100人計画『横浜~パラオ航海』報告会」を実施。日本とパラオ、両国の子どもたちによる研究発表が行われました。

 

報告会会場の様子

 

「財団では、2022年から5年間で100人の次世代の海洋リーダーを育成することを目標として掲げています」と話すのは、同財団が運営する「海洋政策研究所(OPRI)」の所長・阪口 秀さんです。

「その一環として、2023年に世界8カ国・20人の子どもたちと、大型帆船〈みらいへ〉に乗って、横浜からパラオまでを航海する海洋教育プログラムを実施しました。子どもたちは、私たち大人が考えることを飛び越してはるかに多くのことを学んでくれたようです」(阪口さん)

 

左から矢口あやはさん、阪口 秀さん、仙田悠人さん、アレックス・ラミレスさん

 

阪口さんの言葉通り、報告会ではアメリカやトルコのトレーニー(訓練生)たちが、船で過ごしたすばらしい12日間の様子をわかりやすく動画にまとめ、ビデオレターとして紹介。ステージには3人のトレーニーも登場し、プログラムを通して得た学びについて語りました。

デッキの掃除、皿洗い、帆を揚げること、どれも新鮮で面白かったです。とくにナイトウオッチは、夜更かししてもお母さんに怒られないのですごくエキサイティングでした!」とトレーニーの活動を振り返るSAKU君(10歳)。そして、印象に残ったものの一つとして、航行中に採取した海洋プラスチックの調査を挙げました。

洋上に漂うゴミはもちろん、よそから持ち込まれるリサイクルごみの処理に苦しむ島にも触れ、「何が問題かを詳しく学び、みんなで解決策を考えました。島や海を守るためには、僕たちは毎日使う物を減らしていくことが大切」だと結論づけました。

 

元気に発言するパラオの子どもたち。笑顔で見守る日本パラオ青少年セーリングクラブ(以下、JPYSC)の新田 肇さん(写真3枚目、右端)

 

また、同財団では、パラオでの海洋人材の育成にも尽力しています。ステージには、財団が支援したOP級ディンギーに乗って、現地でセーリングを学ぶパラオの子どもたちが登壇しました。

小さな手でマイクを握り、 「ヨットは風で動くところが好き! 海も大好き」「OP級はレーザー級(ILCA)やスナイプ級より操船が簡単で、速く走れるのがいい!」「コーチがもっとスキルを伸ばそうって言ってくれるのがうれしい」と、気持ちが込められた発言をしていました。

 

そんな彼らのヨットの上達ぶりについて、「まさにエクセレント!」と絶賛するのは、現地でコーチを務めるパラオセーリング連盟の仙田悠人さんです。

去年の大会では誰もフィニッシュできなかったレースもあったのですが、今年は全員が全てのレースを完走できました。僕が教えたというより、子どもたちは自分で海から学び、風を読み、工夫しています」(仙田さん)

 

そうした成長の様子を見守ってきた、JPYSCの理事・新田 肇さんも、ヨットが子どもたちの育成にもたらす価値についてこう指摘します。

「ヨットは自分だけの力では動かすことができません。風の力があり、私たちみんながチームになって、やっと動き出します。地球の力を借り、私たちも力を合わせながら一つの目標に向かっていく。そういう意味では、帆船を使った教育はまさに“人生の教育”そのものではないでしょうか」(新田さん)

 

さらに、青少年教育を担う一員として会場に駆けつけてくれたのが、プロ野球の選手・監督として活躍したアレックス・ラミレスさん。現在は、長男のダウン症をきっかけに「VAMOS TOGETHER」を立ち上げ、障害のある子・ない子がともにスポーツやアートなどにチャレンジできるよう取り組んでいます。

「子どもたちの才能を引き出すために大切なことは、いろんな子どもたちが一緒になって楽しく交流できる場を作ること。そして、自分の夢を諦めないこと。将来、パラオとも何かコラボレーションができたらステキですね!」(ラミレスさん)

 

阪口さんは、閉幕の挨拶でこう締めくくりました。

「ラミレスさんのVAMOS TOGETHER(ともに歩もう・ともにがんばろう)という言葉通り、私たちも世界中の子どもたちと一緒に挑戦できる機会をたくさん持ちたいですね。現在のリーダー育成の目標は5年で100人ですが、その次の5年は1,000人を目指せるように、世界中にたくさんのリーダーが生まれてくれるように、大きな視野を持ちながら、これからも取り組んでいきます」

 

登壇したみんなで集合写真!

 

(文=矢口あやは 写真=中村剛司/舵社)

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矢口あやは

Kazi誌にて連載「矢口あやは、海ガールはじめました!」執筆中。6月14日、大阪生まれ。ライター、ときどきイラストレーター。旅行誌やカルチャー誌を中心に、グルメ、歴史、美容などのジャンルで活動。生物が好きで2014年に狩猟免許取得。2020年に1級ボート免許取得、さらに2021年に3級海上特殊無線免許取得。夢はヨットで世界一周。 

 

ブログ:https://ayaha-yaguchi.amebaownd.com/

インスタグラム:https://www.instagram.com/ayaha614/

 


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