クジラに衝突、漂流した失敗から8年
4月9日の大阪出航から69日、日本時間の6月17日午前9時50分(現地時間の16日17時50分)ごろ、1人乗りで太平洋横断に挑戦していた辛坊治郎さんと愛艇〈カオリンV〉(ハルベルグ・ラッシー39)が、アメリカ・サンディエゴに到着した。
それは辛坊さんの長年の夢だった太平洋横断が成功した瞬間であり、二人乗りで挑戦するもクジラに衝突して漂流した8年前のリベンジが完遂された瞬間でもあった。
そして、辛坊さんが航海のゴールに選んだサンディエゴは、前回の挑戦のパートナーで、ともに生死の境をさまよった盲目のセーラー、岩本光弘さん(ヒロさん)が住む場所なのだ。
トップ写真は「2カ月ぶりに電波が拾えた」と、17日の7時半過ぎ、ゴールまであと10マイル(18km)の時点で辛坊さん自身がtwitter(@JiroShinbo_tabi)にアップした画像(ずいぶんやせた模様!)。
前回の挑戦失敗と再挑戦に至る経緯は、以下の記事に詳しいので、ご参照いただきたい。
古野電気の辛坊さん応援ウェブサイトに示された、辛坊さんの航跡(一時的にサービス停止中)。航海中ずっとほぼリアルタイムで更新され、多くの人たちが辛坊さんの挑戦を見守った。
また、本日17日放送のニッポン放送各番組や15時30分からレギュラー番組『辛坊治郎ズームそこまで言うか!』では、辛坊さんの生の声を聞くことができるかもしれない。そのほか、さまざまな情報がYouTubeチャンネル『辛坊の旅』などで公開されていく予定になっている。
10,000km以上を走り、ヒロさんと再会
出航直後から強風でトラブルが散発し、前途多難かと思われた航海。4月後半には、おそらく辛坊さんにとって初めての50kt(台風並みの約26m/s)オーバーの強風が吹くも、「死ぬかと思った」とコメントしつつも、何とか乗り切った。
その後、5月8日には日付変更線を通過、5月15日に全行程の半分をクリアすると、以降は天候も比較的安定。出航から1カ月を過ぎたあたりから、辛坊さんには強風予報にも動じない自信が見えはじめていた。
そして日本時間の6月17日の朝、辛坊さんは無事にサンディエゴに到着、実に69日ぶりに動かない大地を踏んだ。北太平洋は島がほとんどない海域で、陸地を見るのも久しぶりだったはず。そこには信頼できる仲間たちにまざって、前回の挑戦失敗の後、別のパートナーと太平洋横断を成功させたヒロさんの姿もあった。
サンディエゴで辛坊さんを出迎えたヒロさん。辛坊さんとの挑戦失敗後、別のパートナーと二人乗りで2019年に太平洋横断を成功させている。「辛坊さんのことがあって、自分の太平洋横断達成を心から喜べていなかったところがあって、今日は本当にうれしい」(ヒロさん)
サンディエゴの港に接岸し、入国審査の係官の到着を待つ辛坊さんの〈カオリンV〉(中央)。
辛坊さんが今回の航海に持参した通信手段は衛星携帯電話(イリジウム)と沿岸でしか使えない国際VHFのみで、あえて最小限の装備で挑んだ航海。数々のトラブルを自力で解決して10,000kmを超える航海を成功させたことは、ヨットマンとして賞賛に値する。
太平洋横断は、辛坊さんがほとんどの番組を降板してまでかなえたかった夢。出航前には、「ディンギー(小型ヨット)に乗るみたいに、ただ気持ちよくセーリングするのが好きなんです。そういうセーリングを続けた結果として太平洋を横断できたらいい」と話していた辛坊さん。69日の航海は楽しめたのだろうか。あたらめて聞いてみたい。
新しいコメントや写真が入りしだい、続報をお届けする予定です。独占インタビューも予定しています!
(文・写真=Kazi編集部/中島 淳)
※辛坊さんの関連記事は、現在発売中の月刊『Kazi』2021年7月号のほか、5月号、6月号にも詳しく掲載しています。ご興味のある方は、全国書店またはこちらからお求めいただけます。
辛坊治郎さんの太平洋横断チャレンジを応援しよう!
古野電気の特設ウェブサイト
https://www.furuno.com/special/jp/shinbo-challenge/
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