太平洋横断中/辛坊治郎さんのヨット徹底解剖①

2021.05.07

4月9日に出航して、途中で何度も嵐に巻き込まれながらも太平洋横断中の辛坊治郎さんの相棒〈カオリンV〉(ハルベルグ・ラッシー39)を徹底紹介。今回は前編です。
(※取材は4月9日の出航以前に実施しました)

 

多岐にわたるフネの準備
衝突、漂流対策も

失敗に終わった2013年の太平洋横断挑戦時に、1級の海上特殊無線技士の資格を取得したり、航行区域「遠洋」(ヨットなど小型船舶は、航行する区域によって安全備品の搭載義務などが異なる)の船舶検査を受けたり、さまざまな手続きをすでに経験していたため、今回の出航に向けての準備は、もっぱら新しく手に入れたフネの改造・整備となった。

 

このフネ(ハルベルグ・ラッシー39)は、もともと前オーナーが世界一周航海を目指して購入したが、病気でその計画がなくなり、大分県で放置されていたものを辛坊さんが中古で手に入れた。世界一周を目指していたとはいえ、その旅に向けての準備前の状態だった。

 

辛坊さんが購入してから発電機、エンジンを載せ替え、メインセールも新調した。

 

風向に対して一定の角度を維持する自動操舵装置「ウインドベーン」を設置。写真は、羽根部分を取り外した状態。テスト使用時には非常に有効だったとのこと。

 

緊急時用の風水力発電機。プロペラを取り付けて使用する。

 

古野電気のレーダー(MODEL1815)も新たに搭載した。「アラーム音が小さく、寝ていて(他船の接近に)気づかないと困るので、大音量のスピーカーとセットにして、すごい音が出るようにテストしました。クジラと潜水艦はどうにもならないですけどね」(辛坊さん)

 

もちろん、ライフラフト(膨張式救命いかだ)など、遠洋航海の装備もそろえた。辛坊さんは、実際に外洋でライフラフトを使用した、数少ない経験者でもある。

「実際にラフトに乗ってみると、意外なことに荒れた海ではヨットより乗り心地がいいんです。海面に接しているためか、ヨットより波にたたかれないんです。漂流時に真水の大事さは痛感していたので、ラフトに積むための造水器(海水を淡水化する装置。米国KATADYN製)を手に入れました。もうラフトは使わないようにしたいんですが(笑)」

 

コクピットはドジャーで完全に覆われ、ドライな状態を保てる。ドジャーを外した状態でも、高さのあるコーミングに囲われて安心感がある。

 

メインシートはステアリングホイール後方にリードされ、ドジャーの内側で操作できる。

 

積載スペースに余裕があるキャビン。天井のネットにあるのは、エマージェンシー用の風水力発電機のプロペラ。

 

メインハリヤードはマストから引く仕様だが、マスト横には体を預けたりつかまることができる金属製のレールが設置されている。

 

5月7日9:13現在の辛坊さんの現在位置。全航程の4割ほどを走り、間もなく日付変更線に到達しようとしている(日付変更線を西から東にまたぐと、日付は1日逆戻りする)。
奮闘中の辛坊さんの現在位置情報は、古野電気の特設サイトから閲覧可能。安全な航海をお祈りします。

 

(文・写真=Kazi編集部/中島 淳)

 

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