セールボートの世界では、その名を知らぬ者はいない「ナウターズスワン(Nautor's Swan)」。高級ブルーウオーターヨット、そして高性能なレーシングヨット、さらにはマキシヨットと、唯一無二の存在として君臨している。半世紀以上にわたる、その長く輝かしい歴史に、いま新たな1ページが加わった。
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2021年の年初に、スワンでは初のパワーボートとなる「Shadow」のリリースが発表された。このセンセーショナルなニュースが、瞬く間に世界を駆け巡ったことはいうまでもない。セールボートの世界で圧倒的な歴史と実績を持つスワンが、なぜこのタイミングで新しいセグメントに参入してくるのか? そしてそれは、いったいどんなボートなのか?
その記念すべきワールドプレミアの場となったのは、クラブスワンによるヨットレースイベント「The Nations League 2021 / Swan Tuscany Challenge」(5月24日~29日)の最終日に行われたディナーパーティーの場。イタリア東岸、フィレンツェに近いマリーナ・ディ・スカルリーノ内のプールこそがメインステージであり、それを囲むように設置されたテーブルにつく人々たちが、この記念すべき瞬間を誰よりも早く味わうこととなった。
このボートのコンセプトについて「多目的モーターヨット」という表現が使われている一方で、「テンダー(=足船)」とも紹介しているあたりは、全長100ftを超えるようなマキシヨットも手掛けるスワンならでは。もっともこのShadowは全長が13.2m(約43ft)と、私たちの尺度では、とてもテンダーの概念に当てはめることはできないし、メインボートとしてもまったく問題なく使えるものであるわけだが・・・。
刻々と日が沈むなかで始まったディナータイム。カバーを外されて、この日の主役として姿を現したShadowは、先鋭的で振り切ったフォルムを持ちながらも、一目見ただけでスワンのボートだとわかる圧倒的な存在感を醸し出している。
このShadowのリリースについて、ナウターズスワン社を含むフェラガモ・グループの総帥であるレオナルド・フェラガモ氏は、次のように語る。
「これはスワンにとって、マイルストーンとなる出来事です──何年、何十年もの間、私たちは私たち自身に問いかけ続けてきました。なぜこれだけたくさんの素晴らしいボートがあるのに、また別のボートを生み出す必要があるのか? それでも人々は、新しいボートを求め続けました。しかし私たちは、パフォーマンス、エレガンス、信頼性という、いわばスワンのDNAを引き継ぎ、そのうえで新しい何かを見つけられない限りは、このセグメント(=パワーボートの建造)へ参入することを拒み続けてきたのです」
このような徹底的なまでのこだわりをクリアして生まれたShadowは、スワンのDNAやレガシーを継承しつつ、現代ならではのイノベーションを融合。新しい世界を見せてくれる1艇であるという、絶対的な自信に満ちあふれている。
余計なものをそぎ落とし、それでいてスワンクオリティーが存分に発揮されたデザインは、精悍でありながら優雅さをも持ち合わせたものである。
スワンのイメージからすれば、居住空間も充実した流麗なラグジュアリークルーザーかとも思ったが、Shadowはセンターコンソール艇というスタイルを採用。スワンのモデルらしく、全面にチークがあしらわれたフロアは、広々としており圧巻。この1号艇はTトップを備えているが、その両サイドにガラスを備えたものや、屋根の面積が半分ほどのものなど、3タイプのなかから選べるようになっている。
階段状のステップハル(上写真)を採用し、パワーユニットは300馬力船外機の3基掛け。圧倒的なパフォーマンスを発揮するだろうことが容易にうかがえる。300馬力×3の場合の最高速は、50ktをゆうに超えるということだ。
フロアのミジップには、対面式のラウンジエリアが設けられている。とにかく余裕にあふれている。
1号艇は、後部にサンベッドを配する仕様。これを置かずに広々としたスペースにし、ファイティングチェアを設置すれば、優雅で贅沢なスポーツフィッシャーとなる。
船首には、サンベッドと対面式のソファを配置。チーク張りの幅広のガンネルが、ひときわ存在感を放っている。
船首にはダブルベッドを配し、トイレが備わる。この潔さが逆に新鮮に映る。
創業以来、半世紀以上にわたって、数多くの名艇を生み出してきたナウターズスワン。伝統にあぐらをかくことなく、斬新なコンセプトで新しい歴史を重ね続けている。このShadowは、新時代のスワンを予感させる歴史的な一艇になるに違いない。
(文=舵社/安藤 健 写真=Nautor's Swan)
ワールドプレミアの動画はコチラ↑↑
SPEC
●全長:13.23m
●水線長:10.70m
●全幅:4.3m
●喫水:0.86m
●艇体重量:4,500kg
●燃料搭載量:1,000L
●清水搭載量:130L
●推進方式:船外機
●エンジン:225馬力×3(オプション250馬力~300馬力×3)
(問い合わせ)
リビエラリゾート
TEL: 0467-24-1000
https://www.riviera.co.jp/marina/sales/
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