■トップ艇がケープホーンを通過
単独無寄港世界一周レース「ヴァンデ・グローブ」は、スタートから58日が経過(2021年1月4日)。過去の大会で大荒れして多くのリタイア艇を生んだ高緯度海域・サザンオーシャンは、今大会ではそれほど荒れておらず、高気圧帯の微風海域が現れるなど少し違った様相を見せている。所要時間記録の更新は難しい状況だが、レース前半でリタイアした6艇を除く27艇のレース艇団は順調な航海を続けている。
1月3日までに、上位2艇が南アメリカ大陸最南端に位置するケープホーン(ホーン岬)を通過。ここまで世界一周全航程のおよそ7割を走り、ついにスタートした大西洋へ帰ってきた。
ケープホーンをトップで通過したのはヤニック・ベスタの〈Maître CoQ IV〉、半日遅れてシャルリー・ダランの〈APIVIA〉も通過した。ひたすら東へと進むサザンオーシャンレグ(言い換えれば南極大陸回航レグ)を終えたトップ艇団は、ここから北上、スタート地であったフランスのレ・サーブルドロンヌを目指すことになる。
1月2日にケープホーンを通過し、1月4日現在トップに立っている〈Maître CoQ IV〉のヤニック・ベスタ。6.5m艇による大西洋横断レース「ミニトランザット」や、クラス40の大西洋横断レースで優勝した経歴を持つ。48歳。ケープホーンからフィニッシュまでは約7,000マイルだ。
photo by Yannick Bestaven / Maitre Coq
トップ艇〈Maître CoQ IV〉から約160マイル差でケープホーンを通過したシャルリー・ダランの〈APIVIA〉。遠くに見えているのが南アメリカ大陸の南端にあるケープホーン。
photo by Charlie Dalin / Apivia
ケープホーン通過後、画面右側の〈Maître CoQ IV〉と左側の〈APIVIA〉は大きく東西に分かれた。ここからは大西洋を北上する最終レグだ。
フォイル(水中翼)なしの艇で先頭に立っている〈GROUPE APICIL〉のダミアン・セギャン。生まれつき左手にハンディキャップのあり、過去4度パラリンピックに出場している。ハンディキャップのあるセーラーがヴァンデ・グローブに参加するのは初めて。
photo by Damien Seguin / Groupe APICIL
昨年11月のスタート直後の〈GROUPE APICIL〉。
photo by Olivier Blanchet / Alea
■白石康次郎も確実に前進中
白石康次郎の乗る〈DMG Mori Global One〉は、レース前半にメインセールとバウスプリットを破損したが、ここ1カ月近く、大きなトラブルもなく順調にサザンオーシャンを東へと進んでいる。昨年12月20日前後にニュージーランド南方を通過して以降は、陸地から大きく離れた海域を航行中で、次の目標であるケープホーンまでは、まだ2,900マイルある。
年末年始に配信された動画レポートでは、以下のように話している。
「今年(2020年)はチャレンジングな年でした。スタートできて(メインセール破損で)一時はレースをあきらめかけたけども、みんなに応援してもらって、チームに支えてもらって、今ここでお正月を迎えられて、感無量です。とにかく安全にフィニッシュして、みんなにお礼が言えるようにしたいです」(昨年12月31日の配信)
「新しい年は、光の年にしたいですね。元気よく、明るく、前向きに。とにかく一歩一歩進んで、フィニッシュして、みんなと祝杯をあげたいと思います。そして日本を元気にするために何かできたらと思います。そのためにも僕が元気でいなくちゃいけないし、太陽のように自ら光を放たなきゃいけないので、これからも精一杯がんばります」(1月1日未明の配信)
photos by Kojiro Shiraishi / DMG Mori Global One
また、大会公式の『VendeeGlobeTV』のスタジオとつないでの12月31日インタビューでは、船の状況についても話した。
「こまごま壊れているんだけど、今のところひどい問題はないです。今回はとても長い旅になりそうです。(メイン)セールが1ポイント(縮帆の状態)しかできず、あまり無理ができないので、フィニッシュを目指して大切に大切に走っていきたいと思います。こうやって走れているだけで幸せです」
アジア人初のヴァンデ・グローブ完走まで、残り1万マイルだ。
(文=Kazi編集部/中島 淳)
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