ルナロッサ勝利への道/プラダカップ決勝の戦い(後編)

2021.03.08

 

プラダカップ決勝の熱き戦いを振り返る! その後編。
※前編の記事はこちら

 

第36回アメリカズカップ挑戦者決定シリーズであるプラダカップ決勝。7勝先勝の戦いは、第6レースを終えた時点でルナロッサ・プラダ・ピレリ(イタリア)が5勝、イネオス・チームUK(イギリス) が1勝と、圧倒的にイタリア有利で勝負が進んでいた。

コロナ禍により2月17日のレースはキャンセル、2月20日に第5、6レース(前編で紹介)、そして21日に第7、8レースかが開催された。

あとがないイギリスのスキッパー、ベン・エインズリー。そして、王手一歩手前のイタリアのダブルヘルムスマン、フランチェスコ・ブルーニとジミー・スピットヒル。

激アツの戦い、その最終日となった四日目を振り返ってみよう。 

(トップ写真:photo by COR 36 / Studio Borlenghi)

 

■プラダカップ決勝・第7レース/PC FR7

©www.youtube.com/americascup

イネオスがまたもよいスタート。スタートは、はっきりいってほとんどイネオスが優勢だった 

 

 

©www.youtube.com/americascup

リーバウのまま左のバウンダリーまでルナロッサを引っ張る。マークに対するゲインは19mあり、(船首方向で)2艇身以上前方を走るイネオスだったが、ヘッダー後に艇速を失い、一気に差を詰められる。左下のゲージで、VMGが15ktまで落ちていることが分かる

 

 

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ビッグヘッダーの瞬間。イネオス(右)のバウがかなり風下へ落ちている 

 

 

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艇速は、アップウインドもダウンウインドもルナロッサが速い。そのうえ、コース選択もよく、タッキング&ジャイビング回数も少ない 

 

PRADA Cup Final - Race 7
Start: 1615
Port: GBR
Stbd: ITA
Course: A
Axis: 037
Length: 1.95nm
Current: 0.2 knots @ 007
Winner Luna Rossa Prada Pirelli – 1:45

 

 

■プラダカップ決勝・第8レース/PC FR8

©www.youtube.com/americascup

第8レースのスタートは、アウターマーク付近でプロテスト発生。その決着の前に、ルナロッサ(左)がクロスド・ライン・アーリー=リコール 

 

 

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プロテストの解析画面。まず風下先行のイネオス(奥)がタッキング。ルナロッサ(手前)の前を通過。ギリギリではある 

 

 

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ディップ(バウダウンして回避)するルナロッサ(手前)。同時にプロテスト発声。イネオス(奥)はスタートラインから出ないようバウダウン 

 

 

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ジャッジの判断はノーペナルティとなった。むしろ、ラインを超えたルナロッサ(左)にリコールのペナルティが…… 

 

 

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有利なアドバンテージを得てスタートしたイネオスは、マッチポイントを取られ後がない……。が、しかし、第1レグを取りこぼす。微妙な艇速差があるようだ。

「プロテストで勝ったのに、スタートでも勝ったのに、相手がリコールしたのに、なぜ勝てない!」とアナウンサーが絶叫する 

 

 

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大差をつけフィニッシュするルナロッサ! 7勝先取! プラダカップ決勝を制した瞬間だ!

 

 

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フィニッシュ後、勝利に歓喜するルナロッサの艇上インタビュー。まずはスピットヒル(左)へ「おめでとうございます!」。

スピットヒル「勝利できてうれしい。ベンは最高にタフなライバルだった」

記者からフランチェスコ・ブルーニ(右)へ質問がとぶと、

ブルーニ「ファンタスティコ!ファンタスティコ!(すばらしい、信じられない!)」

と、絶叫しながらスピットヒルに抱きついた!

 

Prada Cup Final - Race 8
Luna Rossa Prada Pirelli beat INEOS TEAM UK
Start: 1715
Port: ITA
Stbd: GBR
Course: A
Axis: 030
Length: 1.85 nm
Current: 0.3 knots @ 007
Wind: 12 knots - 025 degrees
Winner: Luna Rossa Prada Pirelli – 0:56

 

 

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ルナロッサ7勝、イネオス1勝。圧倒的な大差でルナロッサがプラダカップ決勝を制した 

 

 

photo by COR 36 / Studio Borlenghi

完璧ともいえる勝利をおさめたルナロッサ・プラダ・ピレリ。艇速、タクティクス、ストラテジーに死角なし。とにかくミスのない鉄壁な走りを見せた

 

 

photo by COR 36 / Studio Borlenghi

 

次なる敵は防衛者、エミレーツ・チームニュージーランド(上写真手前)だ!

3月10日(予定)から再設定スタートが始まる、第36回アメリカズカップ本戦が待ちきれない!

 

(文=Kazi編集部/中村剛司)

 

※関連記事は月刊『Kazi』2021年4月号にも掲載予定。バックナンバーおよび電子版をぜひ

 


■プラダカップ決勝4日目、動画はコチラ
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■プラダカップ記事・編集後記

プラダカップの勝利については、実はKazi編集部は大いに揺れた。

月刊『Kazi』4月号(3/5発売)の校了は2月24日。プラダカップがフルセットまでもつれたら、予備日の2月24日まで延長された可能性もある。さらにいえば、オークランドのロックダウンが深刻化すれば、2月24日には決まらない(4月号に結果を掲載できない)、という恐怖もあった。

思い返すのは8年前。第34回アメリカズカップ(2013年サンフランシスコ大会)本戦のこと。戦いは防衛者オラクル・チームUSA(当時最年少スキッパー:ジミー・スピットヒル)と挑戦者エミレーツ・チームニュージーランド(ベテランスキッパー:ディーン・バーカー)。

9勝先取の戦いは、バーカーの圧勝で進み、エミレーツは8勝2敗とマッチポイントを迎えた。入稿間際、もうエミレーツの優勝だな、と見切り発車で記事を作ったのだが……(下の写真参照)。覚えている方も多いと思うが、その後、エミレーツはまさかの7連敗を喫し、銀杯は防衛者オラクルが守り切ったのである。

何が起こるかわからない。それがアメリカズカップ。 今回も、イネオス・チームUKが突然走り出し、7連勝! ってこともありえた(それを夢見た)。

当然記事は、イネオス優勝とルナロッサ優勝の二つを作って進行した。 結果、ルナロッサの勝利となった。潜在的にベン・エインズリーに勝ってほしかった気持ちが強かったのか、最初の段階ではイネオス優勝で記事を展開。決勝のルナロッサ4連勝を見て、速攻ですべてを書き換えた。

今では、イタリアの陽気なセーラー、フランチェスコ・ブルーニが大好きになっている自分もいる(ファンタスティコ! 笑)。

そんな感じで苦労して作りました『Kazi』4月号(3/5発売)、ぜひお手にとっていただけたら幸いです。

などなど、プラダカップは終わったが、アメリカズカップは終わっていない。 今度は、8年前に最年少スキッパーともてはやされたジミー・スピットヒルと、異彩を放つ若きスキッパー、ピーター・バーリングの戦いだ。

8年前のドラマが、役者をスライドさせて再現されたかのような、歴史のあや。この交代劇は、なんども繰り返されている。

まだまだドキドキさせてくれそうな予感絶大! 楽しく編集作業を進めます!

(Kazi編集部/中村剛司)

 

■8年前の記事/注意:今回の記事ではありません(笑) ※上がボツ。下が決定稿


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