ダブルハンド世界一周ヨットレース「GLOBE40(グローブ40)」を完走したチーム〈MILAI〉(クラス40)。スキッパーの鈴木晶友さんと、チームオーナーでコスキッパーの中川紘司さんの2人に日本でインタビューを実施しました。その前編をお届けします。
フランスで受けた衝撃
――世界一周おめでとうございます。
鈴木:長い間ありがとうございました。
中川:こんな僕らをウォッチし続けていただいて、ありがとうございます。
――実際に走った距離はどのくらいでしょう。
鈴木:32,000マイルですね。約6万kmです。
――そもそもお二人はいつから面識があるんですか。
鈴木:私が2018年に前職のセーリングの専門商社(SAILFAST)を退職した後です。
中川:もっと昔に実は同じレースに出ていたんだよね、ジュニア時代。
鈴木:あ、そうそう! 浜名湖のジュニアチャンピオンレガッタ。
中川:僕が高校2年生くらいでシーホッパーで出ていて、マサ(晶友)がミニホッパー。
鈴木:小学6年生くらいですね。思い起こせば。
中川:中古でシースケープ27(現ベネトウ・ファースト27)を買ってコーチを探していたところ、マサを紹介してもらったんです。それがこの縁の始まり。そこからマサの手の上でコロコロと(笑)。2019年9月のミニトランザット(以下、ミニ)の応援にフランスに行ったんです。あれも作戦だったのかな。
鈴木:バレました?(笑)
中川:そこで「外洋レースってこんなに格好いいんだ。日本にはない文化だな」と思ったんです。マサが地元の小学生にサイン攻めにあっている。「僕の好きなヨットで、こんなに街中、国中の人が応援するレースがあるんだな」と。
――それを見て、自分も同じことをしたいと思ったのでしょうか。
中川:思ったんですけど、ミニ6.50は小さすぎるし、語学力や時間の問題でも、1人では無理だなと。いろいろなものを捨てないとこの世界には飛び込めないなと思って、憧れで終わったんです。ミニトランザットが無事に終わって、マサが帰ってきて「御礼のあいさつを」って言うから、お土産でも持ってくるのかなと思ったら手ぶらで、「グローブ40というレースが始まるので、一緒に出ませんか」ってプレゼンされたんです。
鈴木:その時はまだ何も決まっていなくて、まず自分が出たかったのと、フランスで紘司さんが「いつか外洋レースをやってみたい」って言っていたので、日本チームかつ熱意のある人と組みたく、その夢に一番近い人が紘司さんでした。即答はなかったです。やるとしても時間的な余裕もなくて、チームメートがもう1人必要だったので、アン・ボージ(チーム発足当初のメンバー。現在はジ・オーシャンレースのオンボードレポーターなどを務める)を誘ったんです。年末に話をして、僕はそのまま日本-パラオ親善ヨットレースに出て、パラオに着いた時に「やろう!」という連絡をもらいました。1月頭に挑戦が決まって、1月末のミニの報告会で発表しました。
――そう考えると時間が短いですね。当初グローブ40は2021年6月スタートでしたから、その時点で残り1年半です。
鈴木:ミニや今回もですが、イメージが自分の中ではできていて、それが自分の才能でもあると思っているんです。こういうプロセスでこうやれば成功するだろうと。やるべきことのシミュレーションはできていました。
スタート前日の2022年6月25日、参加7艇のスキッパーとコスキッパーの集合写真
photo by Fumina Moriguchi / Kazi
走って分かったコースの難しさ
――フィニッシュして1カ月(取材日は5月10日)たち、今どういう気持ちでしょうか。
鈴木:海の生活に戻りたいですね。フィニッシュ前日までは紘司さんと2人で「早く陸に」って話してましたけど、ロリアンの手前のグロア島を超えてフィニッシュラインが見えたとき、「またこの海に戻ってきたいな」というのは感じました。
中川:1カ月ぐらいはもういいやって思ってたんですけど、今はまたヨーロッパの海でセーリングしたいなと思いますね。
――以前お話を聞いたときに、「このコースで世界一周できるか、実験をさせられている」という風に話していました。グローブ40のコースのどのあたりに改善の余地があると思いますか。
鈴木:今大会は7艇スタートして、最終的に5艇になってしまいましたが、選手同士でよく出たのは「No Mauritius!」でした。ケープタウンを回ってモーリシャスまでの1,000マイルくらいが、8月で冬なので、アップウインドできついんですよ。寄港することでかなり時間も使います。運営側も今回8レグで長かったと感じたようで、2025年大会は6レグにするそうです。寄港地は発表していませんが、オークランドではなくオーストラリアのどこからしく、僕の予想では次はホバート(タスマニア)に寄るんじゃないかなと。理想はカーボベルデからケープタウン、そしてケープタウンからホバートまで一気に走るコースですね。
――どこの海が一番ハードでしたか。
鈴木:全部ハードな局面があったので決めづらいですが、やはり第5レグのウシュアイアの手前は、どんどん南下するにつれてきつくなっていきましたね。南氷洋まではいかず、南太平洋なのですが、それでも南下するにつれ、波の大きさは変わらなくてもトルクが強くなる、つらいレグでした。紘司さんと一緒に乗った第4レグのオークランドからパペーテは、2,500マイルぐらいでそんなに長くはなかったんですけど、アップウインドが続いて波も悪くて。どのレグもトラブルがあり、なかなか一筋縄ではいかなかったです。シャチにラダーをかじられること(プロローグレース終盤の出来事)から始まり……。
中川:あの動画、すごい再生回数いったんですよ。40万回かな? 世界中のセーラーが見たと思います。
2022年6月26日、モロッコ・タンジェ沖をスタートする〈MILAI〉
photo by Fumina Moriguchi / Kazi
■GLOBE40
公式サイト:https://www.globe40.com/
トラッキング:https://www.globe40.com/en/map-tracker/
Facebook:https://www.facebook.com/globe40
■MILAI
公式サイト:https://milai-sailing.com/
Faceboook:https://www.facebook.com/milai.aroundtheworld
(文=森口史奈/Kazi編集部 写真=山岸重彦/舵社、森口史奈/Kazi編集部)
※この記事は、2023年の『Kazi7月号』の「グローブ40総復習 〈MILAI〉の鈴木晶友、中川紘司インタビュー 174日、世界一周の遥かなる旅路」を増補・再編集したものです。7月号のお求めはこちらから。
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