現在、ニューヨーク・ヴァンデ(シングルハンド大西洋横断レース)の真っ最中の白石康次郎さん(DMG MORIセーリングチーム)から、自身の記録(最年少単独無寄港世界一周:1993~1994年)を塗り替えた木村啓嗣(ひろつぐ)さんへのお祝いのコメントが届いた。
木村さんは、2023年10月22日に兵庫県・新西宮ヨットハーバーを出航。翌日16:55に紀伊水道ライン(紀伊日ノ御埼と蒲生田岬の間)を通過し、東回りで世界一周を目指した。231日かけ、2024年6月8日14:40に同ラインを通過し、ゴールとなった。
■単独無寄港世界一周 日本人最年少記録
これまで長い間、最年少単独無寄港世界一周記録を保持してきた白石さんは、ニューヨーク・ヴァンデ(シングルハンド大西洋横断レース)に参加中。5月29日に米ニューヨークをスタートし、フランス時間の6月8日20時時点で、フィニッシュ地のフランスのレ・サーブル=ドロンヌまで残り約1,060海里となっている。
ニューヨーク・ヴァンデのスタート時の白石康次郎さん
photo by Kojiro Shiraishi / DMG MORI SAILING TEAM
以下、大西洋から届いた白石康次郎さんのコメントを紹介する。
まず、木村くんが世界一周に挑戦した意義についてです。チャレンジというのは素晴らしいことで、いろいろ新しいことを学べます。「かわいい子には旅をさせよ」という昔からの言葉がありますが、まさにその通りで、特に若い頃に大きな夢にチャレンジすることは、人生の中でとても大切だと思っています。僕も最初に世界一周したとき(1994年)のあのチャレンジは、今でも忘れないです。本当に素晴らしいチャレンジでした。木村くんも失敗を克服して世界一周したわけですから、若者が挑戦する意義は、人生を豊かにすることにおいてとても大切なことだと思っています。
僕の記録を抜いたときの率直な感想は「とってもうれしい」です。30年間だれもチャンレンジしなくてさみしい思いでしたが、木村くんが最年少で、その記録というよりも、単独無寄港世界一周を無事に果たした、そっちのほうが大記録だと思います。また、今フランスの外洋レースでは日本の若者がチャレンジしてくれています。ここ最近、外洋レースを目指す若者が増えてきて、うれしく感じます。
木村くんのチャレンジを通じて、若者たちに影響が出てほしいですね。ヨットに限らず、どんどん世界に打って出る、大きな夢を持って、実際に行動すること、そして最後までやりきること。まず目標を掲げて、行動して、最後までやりきる。とても素晴らしいことだと思っています。僕らのDMG MORIセーリングアカデミーも、木村くんのチャレンジもそうですし、どんどん今の若者に、世界に向けてチャレンジしてほしいと思います。どうか失敗を恐れずに、大いに自分自身を発揮してほしいと感じています。
木村くんへは(出航前に)いくつかアドバイスをさせてもらいました。役に立てばいいなと思った次第です。また、本人と会ったらいろいろな話をしたいなと思っています。
最後に、木村くんへのメッセージです。木村くん、本当に本当におめでとうございます。長い長い航海、本当にお疲れさまでした。本人にしか分からない苦労がいっぱいあったと思います。いろいろな困難があったと思います。それをひとつひとつ乗り越えて、見事、夢を果たしたことは素晴らしいです。これから木村くんの挑戦を周りの人に語って、そして木村くん自身も、もっともっと夢を膨らまして、素晴らしい人生にしてほしいなと思います。今こうやって、僕もこの歳(57歳)になっても洋上にて、世界に向けてチャレンジしています。お互い、セーラーとして、今度語り合いたいなと思っています。まずはゆっくり体を休めて、今までやってきたことを噛み締めていただければなと思います。心からおめでとうと言いたいです。本当におめでとうございます。今度、日本で一杯やりましょう。
(文=森口史奈/Kazi編集部 写真=山岸重彦/舵社)
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