月刊『BoatCLUB』の奇数月号で連載している「孤高の釣り人Mr.ツリックの ふらっと貸しボートに乗りにきた」では、料理上手な釣り人Mr.ツリックが、関東を中心に全国の貸しボート店を巡り、その地、その季節に合った釣りを楽しむ様子をお届けしています。
今回は、『BoatCLUB』2022年11月号に掲載された「漁師直営のボート店で五目釣り」を一部再編集したダイジェスト版をお届けします。
※取材は2022年8月に実施。記事内に掲載されている写真の内容などは、取材当時のものです。
みなさま、こんにちはMr.ツリックです。
さて、今回は久々の沼津です。この前にお邪魔したのは2年半前でしたっけネ。たしか、コロナ禍の初期でまだ世の中は以前と変わらずにぎやかでした。そして、レンタルボート店が次々と閉店していく中、新規オープンした貴重な店を発見して伺ったのですが、その店もその後のコロナ禍の影響でクローズしてしまいました。いい釣り場が見つかったと思っていたのに残念ですナ。
さてさて、西伊豆あたりでヨサゲなレンタルボート店はないかとググっておりましたら、「沼津西浦貸しボート 海星」と見慣れぬ文字を発見。さっそくウェブサイトを拝見すると、場所は平沢ですか。昔、禁止される以前に可搬艇を積んで何度か訪れたことがありました。
かつてはこの近辺を頻繁に行き来していたなぁ。内浦や木負はもとより、この先の立保や古宇にも手漕ぎのレンタルボート店があったし。それと立保の先にある西浦園は、昔はホテルでフロント係の女性がボートの受付もしていた。今はレンタルボート専門になったとか。
ところで、関東近郊でこれだけのイケスが浮いているエリアは沼津しかない。そういえば、沼津は静岡県なので関東地方ではないのかぁ。いつも見るテレビの天気予報では、伊豆半島まで画面に入っているから勘違いしてしまいますナ。
かつてエントリーが許されていたときに、何度となく可搬艇で出艇した平沢。護岸の風景は大きく様変わりをしたが、道路際の湧き水は健在でした。昔はドラム缶だったケドネ
イケスに直接係留できる数少ない釣り場である。もちろん、すべてのイケスではないし、漁師が近くに作業をしにきたら即座に移動しなければならない
付けエサのオキアミ。コマセにはアミエビを使う。いつものコンビですナ。小分けのオキアミは残っても持ち帰り冷凍保存できるので便利だ
定番のコマセマダイ仕掛け。おっと、クッションゴムが抜けておりますナ。長仕掛けではないので、クッションゴムも50センチの短いモノでもOKです
さて、ハナシはイケスからそれたのかな。イケス周りの釣りについて書きたかったのですヨ。まず、沼津以外にもレンタルボートエリア内に養殖イケスが設置されている場所は、関東近郊に何カ所か存在する。しかし、海星サンのようにイケスに直接係留することができる場所は希少だ。あるとすれば、ボートとイケスの管理者が同じところだ。どちらにせよ、乗船前に指示されるハズだからルールに従いましょう。
イケス周りの釣り方で代表的なのは、コマセマダイ、マキコボシ、ダンゴ釣りですか。あと、エギングやジギングもできるナ。
イケス周りのダンゴ釣りはボートからの掛かり釣りもあるけれど、イケスの際に釣り座があるパターンもある。いずれにせよ、ボート釣りとはチョット違う感じがする。どちらかといえばイカダ釣りですよネ。
マキコボシ釣りは、太いシブイトを使う手釣りだ。よって、漁師感が強く漂う釣りになる。しかし、イケスに張り巡らさせているロープの合間から巨ダイを力ずくで引きずり出すには都合がよい。それから、コマセをまとったカワラ(リップ)がコマセを撒きつつ沈下し、付けエサをタナまでエサ取りから守り、最後は離脱して、ラインとハリと付けエサだけになるスタイルは、とても理にかなっている釣り方ですナ。
一方、一般的なのはコマセマダイ釣法だ。長いハリスが特徴の釣り方ですが、ハリスは5メートル前後の長さにとどめておく。むろん、ロープ絡みなどのトラブルを避けるためだ。あと、釣れるマダイが小さいときとか、クロダイや青ものなどほかの魚も釣りたい場合は、2~3本バリ仕掛けやウイリー仕掛けを用いるといい。いやいや、やっぱ一発大物ねらい! というならば、1本バリをオススメします。
今回もウキ釣りをする。カゴ釣りではなく、ウキの下にはオモリとハリだけです。コマセマダイ仕掛けのコマセをアテにする釣りです
イケス周りでのウキ釣りロッドは磯ザオよりも取り回しのよいジギングロッドがオススメ。大物がいる場合はそれなりのサオとクッションゴムを
わかりづらいですがファイト中です。当日は大潮。ベタナギだったが、潮が効いていて助かった。潮が速いぶん、タナ取りは難しくなる
イケスの下にエスケープしようとする獲物。ハリス長は1.5メートル。もっと短くてもよいが、ある程度長さがあったほうが食いはいいし、バラシも減る
今回の釣行マップ(静岡県伊東市)
「海釣図V」(マップル・オンより転載)
そんな感じのイケス周りの釣りですが、ここでもオイラはウキ釣りをする。ロープだらけのイケス周りでのウキ釣りは無謀かもしれない。何しろ水深20メートルの場所ならウキ下は十数メートルも取らなければならない。フッキングした獲物が横に走ったら万事休すだ。
しかし大丈夫。今まで、イケス周りのウキ釣りをしてロープ絡みなどでくやしい思いをしたことはない。なぜなら、普通とは逆向きで釣りをするから。
通常は、潮上にボートを留め、コマセと付けエサをイケスの下へ潜り込ませる感じにするが、オラのウキ釣りはイケスから離れる潮に乗せてウキを流す。したがって、取り込み時さえロープに注意すれば、それまではロープとは遠い場所でのやり取りになる。
それでは、イケス周りのマダイが釣れないのでは? とお思いでしょうが、マダイもイケスの下に居着いているのではなく回遊をしている。なので、回遊路に付けエサが流れていればいいのだ。そのために、コマセマダイ釣りとの併用が必須になる。ボート下のコマセマダイ仕掛けから流れるコマセの帯の中を、ウキ仕掛けの付けエサが流れるようにする。
ほかの方法として、ウキ下にコマセカゴを付けるカゴ釣りというテもあるけれど、ウキ下に余計なものを付けると抵抗が増え釣趣が落ちるからイヤなのです。なので、ボート下のコマセマダイ仕掛けは何かが釣れたらラッキー的な、コマセを撒くことがメインな役割なのです。
するってーと、コマセカゴの近くに群がるエサ取りの小魚を横目に、遠くまで流れてきたコマセを安心して食べる大ダイの鼻先にウキ仕掛けの付けエサが流れてくるという寸法なのですヨ。
初獲物はペンペン(シイラ)。直前にY男がバイブレーションでバラしていたのはコイツであったか。まぁ、遊び相手にちょうどイイ。派手なジャンプもみせてくれるし
ハリスが長いので投げにくい。ボートの真下はコマセマダイ仕掛けの長いハリスがあるので、できるだけ遠投する。あるいは、ウキ仕掛けを流してからコマセマダイ仕掛けをおろす
沼津名物オオモンハタ。居着きではなく回遊している。水深20メートルでウキ下は15メートルにしたが、流れるウキを止めれば、エサは海底から7~9メートルの位置かな
あと、イケス周りの釣りで一番のコツは、「移動しないこと」です。これはコマセ釣りに限ったコツですが、漁師さんが近くにきて移動を促されたときや、風や潮向きが極端に変わって思う釣りができなくなった場合以外は移動しない。アタリがないから移動しようは最悪です。回遊してくるのを信じてひたすら待つのみ。アッチが釣れているみたいだからと行ってみれば、すでにソコに魚はいなくて、今までいた場所に回遊しているかもしれないのですヨ。
なんていくら書いてもマダイが釣れなかったので、まったく説得力がありませんナ。
それでも、ワガハイ的には、持参した貧弱なロッドがヒットさせた大ダイとのファイト中にあっけなく折れてしまう──そして、料理編で、ロッドをへし折ったマダイで、〝マダイのサオール〟を作る、みたいな野望はあったのでした。
次回も2年前に開業した新しめのボート屋さんに伺ってみたいと思います。あ、今回と同じイケス周りの釣りになってしまうかぁ。
やっと出ました念願のソウダガツオ。ヒラでなくマルだったのが残念ですが問題ナシ。側線で確認するまでもなく、体形がまちがいなくマルソウダである
最後のゲストはウリンボ(イサキの若魚)。関東近郊でするレンタルボートの釣りでイサキが釣れるのは珍しい。群れを作る魚だから当然の追加を期待するが1尾で終了
須藤恭介(すとう・きょうすけ)
愛称、Mr.ツリック。長年、月刊『ボート倶楽部』の筆者として活躍。現在、同誌に連載中の「孤高の釣り人Mr.ツリックの ふらっと貸しボートに乗りにきた」では、釣りだけでなく、釣果料理のノウハウを紹介している。
(文=須藤恭介[Mr.ツリック] 写真=幸野庸平/舵社)
今回お世話になった貸しボート店
静岡県沼津市の西浦地区、平沢港にある貸しボート店。ボートは全部で4艇(9.9馬力、15馬力、25馬力×2)あるが、休日ともなるとほぼ埋まっている状況なので、早めの予約を。平日割引や、釣った魚種やサイズによってはキャッシュバックなども行っている。
海星
[住 所]静岡県沼津市西浦平沢 平沢港
[連絡先]080-2054-2067(予約はウェブサイトからのみ)
[料 金]10,000円~
[定休日]不定休
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