スイスがSailGPに参戦! ACから続く戦いの連鎖とは!?

2021.09.19

現在、シーズン2の激闘真っただ中にあるSailGPに、新たなチームの参戦が決定! 

それがSchweiz SailGP Team=スイスチーム。9月6日、スイスのジュネーブで、このニュースは発表された。ドライバーにセバスチャン・シュタイナー、チームマネジャーにタンギー・キャリユが就任し、2022年3月開幕のSailGPシーズン3からサーキットに合流する。
(タイトル写真=Loris von Siebenthal for SailGP:スイスチーム艇のデザインモデルの前に立つ、シュタイナー(左)とキャリユ)

 

参加チームは現在8チーム。オーストラリア、イギリス、スペイン、デンマーク、フランス、ニュージーランド、アメリカ、そして日本がそれ。ここにスイスが加わり、9チームでのシーズン3が確約。大会CEOのラッセル・クーツとしては、なんとしても10チームでの開催を模索しており、もう1国の参戦チームの調整に余念がないという。

スイスチーム・ドライバーのセバスチャン・シュタイナーは、同国を代表するセーラー。東京五輪では49er級の代表として参加(14位)。2019年にはスイス・セーラー・オブ・ザ・イヤーをチームティルトの一員として受賞している。SailGPの採用艇F50の練習艇としても活躍する、GC32世界選手権のゴールドメダリスト(2018年)でもある、有望な男だ。

同時に同じくスイス人のタクティシャン/グラインダーにニルス・テューニンク、グラインダーにアーサー・セヴェイの参加も決定。ウイングトリマーとフライトコントローラーはリクルーティング中のようだ。 

 

 

photo by Loris von Siebenthal for SailGP

左から、大会CEOのラッセル・クーツ、セバスチャン・シュタイナー、タンギー・キャリユ。F50の舵輪を手に会見に臨む 

 

 

photo by Loris von Siebenthal for SailGP

スイス西部、レマン湖にほど近いジュネーブで、スイスチーム参加の記者会見が行われた 。写真はサーキットの意義を説くクーツ

 

 

●海のない国、スイス  

中央ヨーロッパの山間部に位置するスイスには海がない。なぜ海がない国がSailGPに参戦するのか・・・。世界のレースシーンに明るい読者なら、もう分かるだろう。そう、スイスはかつて、ヨットレースの最高峰、アメリカズカップに参戦し見事銀杯を奪取した国なのである。しかも、ヨーロッパ初、さらにアメリカとニュージーランド以外で唯一防衛に成功。とんでもない国が、SailGPに参戦することになったのだ。

ここで、スイスとアメリカズカップの歴史を振り返ってみよう。

スイスがアメリカズカップ(以下、AC)に挑戦したのは2003年第31回大会。挑戦シンジケートは、ソシエテ・ノーティーク・ドゥ・ジュネーブから出場したチームアリンギ。しかも、前ACを制したラッセル・クーツが、チーム・ニュージーランドからチームアリンギに移籍というとんでもないニュースを引っ提げての参戦であった。

第31回AC防衛者、チーム・ニュージーランドをくだし、銀杯はスイスの地。ヨーロッパへと移った。

開催地はどこにするのか? 初の湖水開催も噂されたが、結果はスイス国内ではなく、スペインのバレンシアが大会会場に選ばれた。それが第32回大会。さらに、なんとクーツは、チームアリンギのオーナー、エルネスト・ベルタレッリと対立しチームを離脱。チームアリンギは、スキッパー/ブラッド・バタワーズ、ヘルムスマン/エド・ベアードを選出し、ディーン・バーカーがドライブするチーム・ニュージーランドをはねのけ、見事銀杯を防衛した。クーツは、大会規定により、この第32回大会にはどこのチームにも所属することはできなかった。 

 

 

photo by Gilles Martin-Raget / BMW Oracle Racing

第33回大会の決勝マッチ。手前がチームアリンギ。奥が挑戦者、BMWオラクルレーシング(アメリカ)。まだフォイリング艇ではない 

 

 

●マルチハルによるアメリカズカップ  

思い起こせば、アメリカズカップにカタマランやトライマランといったマルチハル(多胴艇)の風を持ち込んだのも、スイスであった。贈与証書を巡る度重なる裁判といった、海上以外での戦いもあったが、その決着は2010年の第33回大会で決する。かつてチームアリンギを牽引し、そして離脱したクーツは、アメリカ代表のBMWオラクルレーシングのCEOとしてチームアリンギに挑戦状をたたきつける。BMWオラクルレーシングのドライブは、当時最年少ACヘルムスマンのジミー・スピットヒル。

もう何がなんだか分からない戦いになったが、チームアリンギのカタマランは、ウイングセールを装備したBMWオラクルレーシングのトライマランに敗れ、銀杯はアメリカに戻ることになった。

こうしてはじまったマルチハル対決。第35回大会までカタマランによるACが開催されることになった。カタマラン開催にこだわった、オラクルチームUSAのオーナーのラリー・エリソンはこの第35回大会に敗れ、次回大会がモノハルになる流れを読み取り、ACの舞台から一歩身を引く。そして、自ら世界最速のサーキットを立ち上げた。それがSailGPなのである。採用艇は、第35回大会のAC50をモディファイし進化させたF50。

やっとSailGPに話がつながった(笑)。 

 

 

photo by Pedro Armester / AFP / 33rd America's Cup SailGP

誕生の立役者たち。右からラリー・エリソン、ラッセル・クーツ、ジミー・スピットヒル。スピットヒルはオラクル・チームUSA解散後、ルナロッサ・プラダ・ピレリのヘルムスマンとして第36回ACを戦った

 

 

●そして、SailGPのステージへ

photo by Thomas Lovelock for SailGP

8チームがひしめくシーズン2。来年は9チームに

 


海のない国スイスの活躍とACの関わり、そしてSailGPの誕生の連鎖について簡単に解説してみました。モノハルフォイラーの現在のACも熱いけれど、やはり一番最初にフォイリングボートでACを沸かせたAC72(第34回大会)、そしてAC50(第35回大会/日本からソフトバンク・チームジャパンが参戦! この話はまたいつか)、これらの魂を受け継ぐF50によるサーキット、SailGPがこれほどまでに私たちを魅了するのは、なんだか分かるような気がします。

シーズン2は折り返しをすぎて、いよいよ終盤へ。われらが日本チームが現在首位。シーズン3では9チームの参加が決定と、ますます熱い世界最速サーキット。いまから見ても絶対楽しいですよ!

 

(文=Kazi編集部/中村剛司)

※月刊『Kazi』11月号に関連記事あり。バックナンバーおよび電子版をぜひ 

 

レース観戦方法 SAILGP 2021 第5戦 フランス大会 

公式大会名:フランス・セール・グランプリ

J-SPORTS 見逃し放送

Day 1 : 配信期間:9月11日(土)深夜0:00~11月30日(火)午後11:59

Day 2 : 配信期間:9月12日(日)深夜0:00~11月30日(火)午後11:59 

 

J-SPORTS 2 ハイライト

配信期間:9月19日(日)午後0:30~11月30日(火)午後11:59

 

詳しくはこちらのリンクにてどうぞ

https://www.jsports.co.jp/pickup/sailing/ 

https://jod.jsports.co.jp/pickup/sailing 

 

その他

SailGP アプリ: https://sailgp.com/about/sailgpapp/

Facebook: https://www.facebook.com/SailGP/

YouTube: https://www.youtube.com/channel/UC8Z3si9YuOzrJN-4dVpW5Jw 

 

セールGP シーズン2大会スケジュール

第1戦 バミューダ大会(ハミルトン)2021年4月24日(土)・25日(日)

第2戦 イタリア大会(ターラント)2021年6月 5日(土)・ 6日(日)

第3戦 イギリス大会(プリマス)2021年7月17日(土)・18日(日)

第4戦 デンマーク大会(オーフス)2021年8月20日(金)・21日(土) 

第5戦 フランス大会(サントロペ)2021年9月11日(土)・12日(日)

第6戦 スぺイン大会(カディス)2021年10月9日(土)・10日(日)

第7戦 オーストラリア大会(シドニー) 2021年12月17日(金)・18日(土)

最終戦アメリカ大会(サンフランシスコ)2022年3月26日(土)・27日(日) 

 


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