辛坊さんの太平洋横断・振り返り③／往路ゴール、すぐ再出発!?
2021.09.19今年の4月9日に大阪を出航し、念願の太平洋横断航海を成功させ、アメリカ・サンディエゴに到着した辛坊治郎さん（65歳）。なんと復路も単独無寄港の航海を成功させ、8月24日に大阪に帰還した。
挑戦の準備段階から辛坊さんを取材してきた記者が、前代未聞の太平洋往復航海を、数回に分けて振り返る。
辛坊さんの太平洋横断・振り返り①／2013年の失敗、漂流の顛末
辛坊さんの太平洋横断・振り返り②／往路は出航直後から嵐
■太平洋の真ん中で
往路の全航程の約40％を走って日付変更線を越えた以降は、比較的順調な航海が続く。また、それまでに50kt以上の嵐を何回も経験した辛坊さんは、衛星携帯電話でのサポートスタッフとの交信で、30～40ktの風が吹く予報を聞いても、「あ、そう」と言うくらいで動じないヨットマンに変わっていた。
しかしながら前半の嵐による足踏みとその後の無風帯によって、ペースは想定の2カ月よりも遅れ気味。
ジブファーラーのロープが複雑に絡んだり、メインハリヤードがマストのレーダー反射器にからんでメインセールが最後まで揚がらなくなったり。大小のトラブルが散発したが、そのたびに対処して乗り切った。何より、10mとも思われる大波の嵐を何度も乗り切った〈カオリンV〉に対する信頼は大きなものになっていた。
■8年越しの太平洋横断、完遂
そして出航から69日後の現地時間の6月16日（日本時間の6月17日）、辛坊さんは目的地であるアメリカ・サンディエゴの地に降り立った。辛坊さんの数十年来の夢、太平洋横断が達成された瞬間だった。辛坊さんは出迎えた人々に向かって、こう話しだした。
「8年かかって着きました」
桟橋にいたのは、アメリカ在住の日本人たちと現地のヨット乗り、日本から駆けつけた辛坊さんの支援者たちだ。それにまざって、前回の挑戦のパートナー、岩本光弘さん（ヒロさん）の姿があった。6月16日は、くしくも8年前に二人が福島から出航した日付だった。
「8年間、どこかずっと漂流を続けているような気持ちでした。8年間かかって、やっとサンディエゴに着きました」（辛坊さん）
「辛坊さんが太平洋横断を成功させて、いま心の底から、自分の太平洋横断を喜べます」（ヒロさん）
自分自身の太平洋横断をどこかで心から喜べていなかったヒロさんと、辛坊さん、二人の太平洋横断挑戦に、ようやくピリオドが打たれたのだった。辛坊さんの体重は出航時に比べて15kgも減っていた。
6月17日、69日の奮闘の末、サンディエゴに到着。税関、検疫の手続きを待つ〈カオリンV〉
サンディエゴでは、失敗に終わった前回（2013年）の挑戦のパートナー、岩本光弘さん（ヒロさん）が出迎えた
■アメリカ滞在わずか6日で再出航
辛坊さんは、アメリカに到着するとすぐに、故障や不具合のある箇所の修理を開始した。大々的に口にはしていなかったが、日本を目指す復路も、一人乗りで走ると最初から決めていたのだ。陸の生活に慣れて船酔いしやすい体質に戻らないように、サンディエゴ滞在中も多くの時間をフネの上で過ごした。
そして到着からわずか6日後の現地時間6月22日朝（日本時間の22日夜）、日本に向けてサンディエゴから折り返し航海に出航した。
「帰路は、安定している貿易風帯を通って、気持ちのいいリーチングの帆走みたいなイメージを持っています。マゼランが世界一周したときのルートなんです。その場所（の航海）を他人にお金を払って頼むのはどうなんだろう、と思って。往路についてはノンストップにこだわりますが、帰路についてはどこかに寄港するかもしれません。小笠原（諸島）とか行けたらいいなあ（笑）」
結果的には、台風シーズン前の到着を急いだ辛坊さんは、復路も無寄港で太平洋を横断することになる。
（つづく）
■波乱万丈の往路航海を追体験
辛坊さんの公式YouTubeチャンネル『辛坊の旅』では、7月4日から、往路航海の模様を毎日動画でアップしている。4月9日の出航以降の様子が1日1本ペースで辛坊さんの「自撮り」で報告されており、太平洋横断を追体験できる、非常に興味深い内容になっている。
（文＝Kazi編集部／中島 淳 写真＝鍋谷直輝）
※辛坊さんの航海についての詳しい記事は、毎月5日発売の月刊『Kazi』2021年5～10月号に掲載しています。ご興味のある方は、全国書店またはこちらからお求めいただけます。
辛坊治郎さんの太平洋横断チャレンジを振り返ろう！
古野電気の特設ウェブサイト
https://www.furuno.com/special/jp/shinbo-challenge/
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