今年の4月9日に大阪を出航し、念願の太平洋横断航海を成功させ、アメリカ・サンディエゴに到着した辛坊治郎さん(65歳)。なんと復路も単独無寄港の航海を成功させ、8月24日に大阪に帰還した。
挑戦の準備段階から辛坊さんを取材してきた記者が、前代未聞の太平洋往復航海を、数回に分けて振り返る。振り返り編の①はこちら。
■リベンジ航海の出航は一人乗り
2013年にアメリカ在住の盲目のセーラー、岩本光弘さん(ヒロさんとと二人乗りで太平洋横断に挑み、失敗した辛坊さん。二人乗りでの再挑戦を考えていたが、辛坊さんの心境に変化が現れる。
「新しいフネを買ってしばらくすると、二人で乗るということに怖さを感じるようになりました。それは前回のパートナーが目の見えないヒロだったからではありません。二人乗りだと、お互いに相手の命に責任を持たなければならず、どちらにも重荷になるはず。一人乗りなら、自分の命の自分で責任を持つだけなので、ある意味気楽です」
この後しばらくして、ヒロさんは新たな挑戦の道を進む。2019年、ヒロさんは新たなパートナーであるアメリカ人セーラー、ダグラス・スミスさんとの二人乗りで、サンディエゴから日本の福島県への太平洋横断航海に成功した。
■ヒロさんの待つサンディエゴへ
辛坊さんの今回の挑戦は、前回のようにスポンサーもなく、テレビ番組の企画にもなっていない。辛坊さんは、多くの番組を降板して出航した。行き先は、ひと足先に太平洋を横断したヒロさんが今も住むサンディエゴだ。
「ヒロが、『辛坊さんがサンディエゴに到着して初めて、僕たちの旅が完結する』なんて言うから、サンディエゴに行くしかないじゃないですか」
■65歳の誕生日を目前に出航
そして出航のタイミングの目安にしていた65歳の誕生日を待つことなく、4月9日、ホームポートである大阪・淡輪ヨットハーバーの桟橋を離れ、愛艇〈カオリンV〉とともに出航した。北東からの15~20ktの追い風の乗って、大阪湾湾口にあたる紀淡海峡(友ヶ島水道)に向かう。ここまでは順調だったのだが・・・。
往路出航直後の辛坊さんと〈カオリンV〉(ハルベルグラッシー39)。
■いきなりの嵐に翻弄される
出航して数日間、強風だったこともあって緊張状態が続き、艤装や積み荷のトラブルも散発して迷走状態だった。進行方向である東からの強風も続いて、紀伊半島周辺で足踏み。3日目以降はなんとか東に進めるようになった。
日本近海を離れた出航2週間以降には、低気圧や台風に巻き込まれ、40~50ktの風が続いて吹くハードな状態。風速は瞬間的に80ktとなり、波高も10m近くとなったが、何とか乗り越えた。この嵐でフネのさまざまな場所にトラブルや破損が発生し、その後、嵐が収まってからは修理に追われたたのは、出航3週目以降だった。(つづく)
■波乱万丈の往路航海を追体験
辛坊さんの公式YouTubeチャンネル『辛坊の旅』では、7月4日から、往路航海の模様を毎日動画でアップしている。4月9日の出航以降の様子が1日1本ペースで辛坊さんの「自撮り」で報告されており、太平洋横断を追体験できる、非常に興味深い内容になっている。
(文・写真=Kazi編集部/中島 淳)
※辛坊さんの航海についての詳しい記事は、毎月5日発売の月刊『Kazi』2021年5~10月号に掲載しています。ご興味のある方は、全国書店またはこちらからお求めいただけます。
辛坊治郎さんの太平洋横断チャレンジを振り返ろう!
古野電気の特設ウェブサイト
https://www.furuno.com/special/jp/shinbo-challenge/
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