日本各地にある海峡や運河などを巡る、月刊『ボート倶楽部』の人気連載「水路を航く」。舵オンラインでは、過去に誌面で取り上げた水路の中から、印象的だったいくつかの水路を再掲する。 第14回は、『ボート倶楽部』2020年12月号に掲載された、三重県四日市市・千歳運河を取り上げる。
※本記事の取材は2020年8月に実施しました。
貨物列車専用跳ね橋が日本で唯一架かる運河
四日市港の旧港エリアを流れる千歳運河には、二つの異なる跳ね橋が架かる。一つは、貨物列車が通行するときにのみ降りる末広橋梁(きょうりょう)。もう一つが、大型の船舶が航行するときに跳ね上がる臨港橋。前者の末広橋梁は国内唯一の貨物列車専用の跳ね橋で、国の重要文化財にも指定されている。珍しい二つの跳ね橋は300メートルほどしか離れておらず、このあたりの観光スポットにもなっている。
四日市港にある貨物列車専用跳ね橋、末広橋梁。平時は跳ね上がった状態で、列車の通行に合わせて橋が降りる。時刻表などはなく、列車が運河の上を通行していく姿を見るために、運河沿いで待つ人がいるほど人気がある。橋が降りているとき、小型船だとその下を通り抜けられるため、線路や貨物列車の真下を間近で見ることもできる。
もう一つの跳ね橋、臨港橋は、クルマと歩行者用で、通常降りた状態になっている。橋桁に当たるくらいの大型船が航行するときにのみ、橋が跳ね上がる。こちらもいつ大型船が通行するかはわからないため、希望の姿を見るには運試し要素の多い運河といえる。
(トップ画像説明)
降りた状態の末広橋梁を、貨物列車が通過していく。長年、伊勢湾をホームゲレンデにしているフィッシングガイドサービス「クラブカイト」の栗田竜男船長も、あまり見たことがない景色だという
全高の低いフネなら橋をくぐり、線路を下から見上げることができる
通常は、このように跳ね上がった状態になっている末広橋梁。歴史的価値から、1998年に国の重要文化財に指定された
線路はJR四日市駅、富田浜駅を経由し、いなべ市にある太平洋セメント藤原工場までつながっている
1894年に完成した潮吹き防波堤。外海からの波の力を弱めるため、2列の堤を用い、内側には水抜き用に五角形の穴が49カ所開いている。1941年に外側が埋められ、防波堤としての役目を終えた。海から近づいて見ると穴の形までしっかりと見ることができる
通常は降りている臨港橋だが、大型船が航行するときは中央部が約70度上がる。標柱には四日市の名産品、萬古(ばんこ)焼きのタイルを使用
四日市港100周年を記念し、1999年に開館した四日市港ポートビルからの景色。地上90メートルの展望室からは四日市コンビナートが一望できる
四日市旧港内には古い倉庫群が残る。倉庫は現在も使用されているが、海側の護岸部分はもろくなっているため、立ち入り禁止
交通安全や海上安全のご利益がある海山道神社(みやまどじんじゃ、上)。杉の木で彫られた日本一の大きさの菅原道真公像(下)が祭られている
■ 海山道神社 四日市市海山道町1-62
(文・写真=舵社/山岸重彦)
※本記事は、『BoatCLUB』2020年12月号に掲載された記事を一部抜粋したものです。最新刊およびバックナンバーもぜひご覧ください。なお、この記事の情報は、誌面掲載当時のものです。
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