【水路を航く】#17/長崎県・針尾瀬戸

2022.05.23

日本各地にある海峡や運河などを巡る、月刊『ボート倶楽部』の人気連載「水路を航く」。舵オンラインでは、過去に誌面で取り上げた水路の中から、印象的だったいくつかの水路を再掲する。 

第17回は、『ボート倶楽部』2019年4月号に掲載された、長崎県・針尾瀬戸を取り上げる。
※本記事の取材は2019年1月に実施しました。 

 


 

渦潮をかき分けて

海上自衛隊や米軍の基地がある佐世保湾と、陸地に囲まれ一年を通じて穏やかな大村湾とをつなぐ針尾瀬戸。 狭く曲がった水路の潮の流れは、最大で10ノットを超える。2本の橋がかかった瀬戸の見晴らし台から目をやると、渦潮で波立つ海面をかき分け、力強く進むフネを見ることができる。 

20年ほど前になるが、初めてヨットを撮影したのが、大村湾で開催されたハウステンボスマリーナ(現・ハウステンボスマリーナ&ハーバー)主催のレースだった。波のない穏やかな水面を走るヨットの姿がきれいだったのと、乗っていたモーターボートがほとんど揺れなかったのをよく覚えている。

ハウステンボスマリーナや長崎空港のある大村湾と佐世保湾とを結んでいるのが、針尾瀬戸だ。この狭い水路には潮の流れが集中し、海面の表情は激しさを増す。ときに10ノットを超える潮流は、風がなくても海面を波立たせる。

鏡のような大村湾から針尾瀬戸へ向かうと、水面がざわざわと波打っているのがよく見える。切りたった崖に挟まれた水路を横断するようにかけられた西海橋と新西海橋は、周囲の風景と相まって美しい景色を作り上げていた。

 

(トップ画像説明)
西海橋から新西海橋を眺める。ボートは真っすぐ進んでいるが、針尾瀬戸の激しい潮流によって曳き波は蛇行しているように見える 

 

西海の丘展望台からは、針尾瀬戸にかかる新西海橋と西海橋が見渡せる。夜明け前、東の空に光が差し込むころ、大村湾から航行してくるフネがあった

 

人気のテーマパーク、ハウステンボスに隣接するハウステンボスマリーナ。日が沈み建物がライトアップされると幻想的な景色になった

 

大村湾から西海橋、新西海橋をくぐって、佐世保湾へと向かう

 

小さな灯台が立つ弁天島と針尾無線塔。旧海軍が1922年に建 設した3本の塔は、高さが136メートルもある。現在は国の重要文化財として保存され、見学もできる

 

地元の人から「SSK」の愛称で呼ばれている佐世保重工業の造船所。旧海軍の造船所施設を活用して建てられた。この日は大型客船〈飛鳥Ⅱ〉がドック入りしていた

 

(文・写真=舵社/山岸重彦)

 

※本記事は、『BoatCLUB』2019年4月号に掲載された記事を一部抜粋したものです。最新刊およびバックナンバーもぜひご覧ください。なお、この記事の情報は、誌面掲載当時のものです。


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