2馬力ボート釣行記/芦ノ湖にボートを持ち込んでワカサギ釣り

2025.10.10

軽くて取り回しがよく、免許も船検も要らない2馬力ボートでの釣行記。今回は暑さ残る湖上で、芦ノ湖ならではのワカサギ釣りを堪能しようと、芦ノ湖へと向かった。

※本記事の取材は『BoatCLUB』2024年11月号に掲載した記事を再編、2024年9月上旬に取材したものです

 


芦ノ湖は箱根にある約3100年前の火山噴火で早川がせき止められてできたカルデラ湖である。さまざまな魚が生息していて、それぞれが釣りのターゲットになっている。有名なのはレインボートラウト(ニジマス)、ブラウントラウト、ヒメマスなどマス系の魚のルアー、フライ、エサ釣り、ブラックバス(オオクチバス)のルアー釣り、そしてワカサギ釣りである。これらの魚はみんな、外から持ち込まれたものである。

今や日本全国に生息しているオオクチバスは、芦ノ湖に日本で最初に正式な経緯のもとに放流され、野生化した魚である。ワカサギは大正7年(1918年)に霞ヶ浦から卵放流されて以来、釣りとは別に、毎年10月1日に解禁される網漁で取れた成魚から卵を採り、孵化させて放流を続けている。網漁で最初に取れるワカサギは芦ノ湖に隣接している箱根神社に奉納されたのち、宮内庁に献上されている。

芦ノ湖にはレンタルボート店がたくさんあるが、マイボートの持ち込みが可能で、船検の必要なエンジン船からカヌーまで持ち込むことができる。しかし、下ろせる場所は限られていて、南側の海賊船とレンタルボート店の間にあるスペースしかない。

駐車場からの距離は約20メートルくらいだろうか。階段があるので大きなボートは難しいだろう。芦ノ湖へのボート持ち込みの申請は同じく南側にある「芦の湖水産センター」で行う。早めに到着し、出艇準備を終えてから、8時30分の開所時間に行けばスムーズに出艇できるだろう

 


芦ノ湖
遊覧船の乗り場とレンタルボート店に挟まれたスペースが出艇場所。洗う必要がないので、水を持ってこなくていいのが楽だ
●駐車料:無料
●ボート持ち込み料:1,000円
●遊漁券:1,800円/日・人
●施設:トイレ

 

訪れたのはまだ暑い日が続いていた9月初旬。先月の大雨の影響か、満水状態で階段まで水位が上がっていたので、かえって出艇しやすくなっていた。タイヤも使わなくていいので、ボートを膨らませたあと、段差にボートを置き、船尾を少しだけ湖上に出して船外機を取り付け、準備を整える。

8時30分に水産センターが開くと、窓口で申請書にボートの概要を記入し、持ち込み料と遊漁券を2枚購入した。駐車場代は無料で、ボートを持ち込んで、2人で釣りをして4,600円、船外機艇をレンタルすると1万円くらいなので、リーズナブルといえる。

 


「芦の湖水産センター」の8時30分のオープンを待って手続きしてから出艇する。この日はシーカヤックの人も一緒に待っていた

 


広大な駐車場に隣接する公衆トイレ。遊覧船乗船者も利用するため、出入港時には混雑する

 


青空に白い雲がすがすがしい芦ノ湖に出艇する。風もなく下界よりも涼しくて快適だ

 


この釣りで必須となるプロッター魚探はホンデックスの「PS-611CNⅡ」。芦ノ湖の等深線情報が入っているのでポイントが絞りやすい。下の魚探画面に映っているのがワカサギの群れである

 

芦ノ湖のワカサギ釣りといえば、長ザオに20本バリのカラバリ仕掛けというのが昔からの定番である。今では各地の湖でカラバリ仕掛けを使ったワカサギ釣りが行われているが、カラバリの発祥地は、芦ノ湖だといわれる。カラバリ仕掛けは赤色やハリに色が付いているものでも釣れるそうだが、芦ノ湖では圧倒的に金バリが有効である。

芦ノ湖のワカサギ解禁は3月2日から禁漁となる12月14日まで。そんな長い期間の中で、カラバリの威力が発揮されるのは、8月末の水温の高いころから、水温が落ちると同時にワカサギの活性が落ちて、深場に移動するまでの間である。秋も深まった11月ごろの水深18メートル以深まで落ちてしまったワカサギは、エサを使わないと釣れなくなる。よってカラバリの最盛期は9~10月である。

カラバリ仕掛けの釣りは、移動する群れをボートで追って、大きな群れに仕掛けを入れるが、最近は6フィート前後のライト調子のロッドに14本バリのカラバリで釣るのが人気になっている。14本バリのカラバリ仕掛けは、オーナーの「スーパーパニック」が定番になっていて、オモリは2.5~4号を使う。ラインはナイロンラインの1~2ポンドくらいを使うのが主流だ。

ライン、リーダーに巻き込み防止用のシモリ玉を入れ、スナップを結ぶ。スナップにスーパーパニックの取り出し口にあるスイベルを掛けて、ビニールから取り出したら、水にしばらく漬ける。水に漬けることで台紙が柔らかくなり、ハリが取り出しやすくなるのだ。繊細な細仕掛けならではのコツである。

 


こうして水につけて台紙を柔らかくしてから外すと外しやすい

 


トラブルでハリ数が少なくなってしまったが、このときはまだ12本あったハリのうち10尾の鈴なりになった

 


カラバリ釣りで初めてワカサギを釣り上げた相棒のM嬢は、3尾掛けた

 

ワカサギの活性が高いときは、それを捕食するブラックバスやマス類も活性が高いので、ワカサギの群れは常にフィッシュイーターに追われている。それゆえ群れの足が速い。ワカサギの群れを見つけてカラバリ仕掛けを落として釣るのが基本となるので、常に魚探を見ながら移動する必要がある。群れを見つけたら、仕掛けを底まで落として、サオを上下に動かして誘うだけ。多点掛けすると重くなるので、それを見計らって巻き上げる。

鈴なりに釣れたワカサギはオモリのほうから外し、上に向かって5尾くらい外したら、オモリをボートの外に出して、残りのワカサギを外す。長い仕掛けを絡ませないのがコツだ。ワカサギを外すときは、上アゴに掛かっているときは引っ張り、下アゴのときはていねいに外すこと。無理に引くとハリが伸びたり切れたりするからである。これがカラバリ釣りの基本である。

 


途中、雲に隠れていた富士山も顔を出した

 


カラバリ仕掛けにワカサギが多点掛けになると、重みを感じる

 


5尾でも多点掛けになるとうれしい。天気がいいのも楽しい

 

魚探を見ながら湖上を低速でボートを走らせると海賊船発着所の沖、水深12メートルくらいにワカサギの群れを発見、すぐに仕掛けを投入する。しかし、ボートが前進してしまい、ラインは斜めになってしまう。2馬力船外機でこの釣りをする難しさがわかった。2馬力以上の船外機には大抵リバースクラッチが付いているが、2馬力船外機にはない。

ほかの鈴なりに釣っているボートはラインが立った状態で釣っているのだが、こちらは斜めのラインだ。根掛かりもしやすい。それでもなんとか釣果を延ばしていくが、この年のワカサギはサイズが小さく、数を釣り上げても量感が少ない。

途中風が出てきたことで、ボートにブレーキがかかりやすくなり、少し釣りしやすくなった。同時に釣果も伸ばせ、仕掛けに鈴なりになったワカサギもゲット。満足したこともあり、13時30分には沖上がりとした。海水ではないので、ボートは拭くだけで、天気がよかったこともあって、あっという間に乾き、片付けも早かった。船外機もずっとフラッシングしている状態だったので、キャブレターから燃料を抜いておくだけ。たまに湖を走らせ船外機をフラッシングするのもいいかもしれない。

 


少し気分転換に芦ノ湖の風景写真に必ず出てくる箱根神社の湖に出ている鳥居を見に行くことに。鳥居の額には「平和」という文字が書かれていて、陸側は外国人観光客でごった返していた

 


鳥居からの帰りに馬の背というポイントでトラウト用ルアーのスプーンを使ってみたが、ノーバイト。タコベイトはコイ釣り用のデコレーション

 


M嬢が釣り上げたウグイ。臭みがあってあまりおいしくないのでリリース。もともと芦ノ湖に生息していた魚種である

 


ハリ数の半分以上釣れれば、鈴なりと言っていいだろう。カラバリ釣りはこのズラズラ感がたまらない

 

丸山 剛(まるやま・つよし)
1962年生まれ、神奈川県在住。海、山、川、湖とフィールドを選ばず全国を飛び回るプロのアウトドアカメラマン。可搬型のボートを各種乗り継ぎ、現在は2馬力ボートに落ち着いた。

 

(まとめ・写真=M嬢/BoatCLUB編集部)

※本記事は『BoatCLUB』2024年11月号より抜粋。誌面では、筆者の視点により、より詳しい仕掛け、ポイント、釣り方などの解説を掲載しているので、気になる人は、バックナンバー電子版最新刊も、ぜひご覧ください。


 

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