【短期集中連載】ルネンバーグからグリーンランドへ/北西航路を走破した43フィート木造ヨット〈インテグリティ〉の大航海(5)

2024.12.09

アイスランドで準備を進めた43フィート木造ヨット〈インテグリティ〉。北西航路に潜む危険を再認識うするため、クルーは二つのトレーニングプログラムを実施。それは冷水海域でのサバイバルトレーニングと、高緯度海域でのファーストエイド(応急手当て)についてのコースであった。5年間にわたる準備は整った。いよいよ北西航海へ出立する(編集部)。

 

【短期集中連載】北西航路を走破した43フィート木造ヨット〈インテグリティ〉の大航海
①北西航路の歴史
②砕氷帆船の建造
③アイスランドでの5年間
④冒険の準備

 

ハルを塗装する前の〈インテグリティ〉。アイスランド・フーサビークにあるノースセーリング社で整備をした

 

〈Integrity〉 諸元

デッキ長:43フィート 
水線長:37フィート
喫水:7.6フィート
メインセール:675平方フィート

 

カナダ・ノバスコシア(Nova Scotia)州ルネンバーグ(Lunenburg)を出航。グリーンランド(Greenland / KalaallitNunaat)へと向かう航路図

 


Transit of the North West Passage(北西航路横断)

 

1st レグ

前回(④冒険の準備)でお伝えしたように、北西航路横断を目指して、我々はあらゆる準備を周到に整えたと信じている。しかしながら、私たちが出航する時にはいつでも風向きは友好的ではなく、海の状態はしばしば不安定だ。そして二流のナビゲーター(わたし)は「星だっていつも測りやすいところにはないし」と不平を並べ立てている。しかしそれが我々の現実なのだとお知らせすれば、幾ばくかの共感は得られるかもしれない。

二つの低い島の間を通って海に出る狭い水路の入り口の一つを見誤ったため、我々は出発した港から1マイルも行かないところで危うく海底に乗り上げるところだった。私はこれまでセーリングに親しむ中で、さまざまな不運やちょっとした事故にも遭ってきた。だから、少々の恥ずかしさや屈辱には慣れっこだが、出航の直後に、港からそう遠くないところで誰かに助けを求めたというのではいささか不名誉に過ぎる。

このナビゲーション上の好ましからざる冒険はすぐに忘れ去られたが、その後に起きたさまざまな出来事を考えると、ここで触れておかなければ、この一件が再び思い出されることは決してなかっただろう。

(次回へ続く)

 

 

下がりゆく気圧。北西航路横断に際し、万全の海況を選んで出航したかったが・・・

 

メインセールを畳み、アンカリング。夜半はオーニングを掛けて結氷に備える

 

ウィル・スターリング氏のHP
Stirling and Son

 

(文・写真=ウィル・スターリング 翻訳=矢部洋一)
text & photos by Will Stirling, translation by Yoichi Yabe

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