基本スキルを身に着けることこそが、安全なパドリング上達の近道。今回のテーマは出艇前点検とメンテです。
(文・写真=嘉藤暖博)
最も安全に直結する消耗品パーツとしては、まず浮力体。そして防水隔壁がある艇では、ハッチのパッキン、ゴムハッチ、インナーハッチカバー、ハッチカバーのベルト&バックルが挙げられます。これらの劣化、破損がないかをチェックしましょう。こうしたパーツがきちんと機能しているかしていないかで、大袈裟な話ではなく生死を分けることがあります。
ハッチのパッキン
パッキンが劣化していると、ハッチを閉じていても水が侵入してしまう。安全に直結する個所なので入念にチェックしましょう。
ゴムハッチ
ゴム製品の大敵は紫外線。ひび割れなど劣化を確認したら交換。異常がなくても紫外線劣化防止のコート剤を塗っておきましょう。
インナーハッチカバー
硬化が進むと、水密が保持できなくなり危険。予備パーツをあらかじめ用意しておくのもいいでしょう。
ハッチカバーのベルト&バックル
ハッチカバーのベルトや、プラスチックのバックルも紫外線により劣化が進むので要注意です。
ハッチ同様に、トラブルが浸水につながるパーツとして隔壁(バルクヘッド)、こちらも重要なチェックポイントです。また、リバーカヤック、カナディアンカヌー、レクリエーションカヤックなどは、浮力体を使用する場合が多いですが、沈した際に浮力体が外れて出てこないかも確かめましょう。固定されていない浮力体に効果はありません。
ハッチ内の荷室(隔壁)
カヤック内部を仕切る隔壁(バルクヘッド)は重要なチェックポイント。特にポリエチレン製は経年劣化を起こしやすいので、浸水がある場合は、シリコンコーキングをするか、発砲ウレタンコーキングをしましょう。
浮力体
リバーカヤックやファルトボート、カナディアンカヌーで使用する浮力体は、空気漏れや固定個所をチェック!
デッキ周り
ロープ類も紫外線劣化を起こしやすいパーツです。ロープは5年、ショックコードは3年をメドに交換したいところです。交換する場合、ショックコードは、結ぶよりステンレスの番線(丸太や鉄棒を結束するために使う針金)で固定し、ビニールテープまたは熱収縮チューブで養生すると、見た目がスマートなのでおすすめです。
スケグのスリット
スケグが出ないトラブルの要因は、たいてい異物の詰まり。異物はカトラリーナイフなどを使って除去します。
コーミング
コーミングは、劣化やダメージで剥離することがあります。浸水のリスクに加え、FRPのガラス繊維が露出して危険な場合もあるので注意しましょう。
ハルは、ボトムとデッキに割れ、ヒビ、変形、薄く押すとベコベコする個所がないかなどをチェック。表面のゲルコートが剥がれている個所や、FRPの地肌が見えているところがないかも確認してください。ネット通販でFRP修理キットを入手できます。またポリエチレンカヤックの場合は、半田ゴテキットでの補修が便利。形状の異なる数種類のコテ先がセットになっているものもあり、おすすめです。さらにFRPカヤックは、カップリングのシームテープ周辺も見逃さずにチェックしてください。
命を乗せる艇です。年一チェックで終わらせず、ぜひ習慣にして毎回の出航前点検を行いたいものですね。
※本記事は『カヌーワールド』VOL.24の連載「カヤッカーのためのリスクマネジメント教室」から抜粋したものです。併せてバックナンバーもぜひご覧ください。
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(著者プロフィール)
嘉藤暖博(かとう・あつひろ)
日本セーフティパドリング協会(JSPA)公認カヌースクールBLUE HOLIC代表。福岡県北九州市出身の53歳でカヤック歴は33年を越える。趣味は料理とバックカントリースキー。春~夏は北海道小樽でカヤックガイド、秋は九州・沖縄方面で釣りとカヤック、冬は山ごもりでバックカントリースキーという生活を送る。
http://www5c.biglobe.ne.jp/~b-holic/
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