このヨットの写真を最初に見たとき、あまりのインパクトに度肝を抜かれてしまった。たぶん多くの人がワタクシと同じように、こう思うんじゃないだろうか──これって、バットマンのヨット?!
アメリカンコミックスや映画でおなじみのスーパーヒーローは、バットモービルという装甲車? スーパーカー? に乗って自由自在に移動していたが、このヨットの写真を見たときに、バットマンが海を移動するための新しい乗り物が登場したのかと思ってしまった。
この鮮烈なスタイルを持つトライマラン(三胴艇)の名は、「ハンスタイガーX1(Hanstaiger X1)」。手掛けたのは、スペインのアリカンテにあるハンスタイガーというビルダーだ。
2015年に立ち上げられた同社の最初のプロジェクトが、このX1。全長19.72メートル(約64フィート)のコンセプトボートで、セールボートバージョンとパワーボートバージョンが用意されている。
セーリングでは最高20ノット、パワーボートバージョンは最高で30ノットの航走性能を誇るという。マストより後方はフライブリッジのようになっており、このしたのエリアに船内空間が設けられている。操船席はマストのすぐ後ろで、透明の屋根(ハードキャノピー)がついている。この複雑な形を持つ上部構造物はカーボン製だ。
後ろから見たシルエット。これまでのプレジャーボートの概念を覆すかのような、斬新すぎるデザインだ。トランサムにあたる部分が開き、船内と一体化した広々としたスイムプラットフォームが展開される。
これが操船席周り。ビルダーのコメントによれば「レカロシートを備えた戦闘機パイロットスタイル」だという。ステアリングのデザインも近未来的。たしかに、戦闘機や宇宙船の世界を想像せずにはいられない。
操船席の後ろ、広大なフライブリッジ。見たこともないレイアウトだ。テーブル? と操船席の間に設けられているのは、船内に降りる階段。
フライブリッジは船の後部まで目いっぱい使っており、最後部には優雅なラウンジが設けられている。航走中は、ドライバーとゲスト(あるいはオーナー)とは、完全に別の空間で過ごすことになる。
フライブリッジの最後端、左舷側には、ジャグジーが設けられている。前衛的ともいえるデザインを持ちながら、ラグジュアリーな設備にも抜かりがない。こういった設備については、オーナーの好みによって自由に変更することが可能だ。
これがメインサロン。トライマランならではの幅を最大限に生かした空間。外観からはちょっと想像ができない、まるで高級リゾートの様相だ。右舷側奥にはグランドピアノが見える! バットマンも一仕事終えたあとには、ここで羽根を休めているのだろうか?!
手前は、左舷側に設けられているギャレーエリア。天井の造作も、かなり凝っている。
メインサロン中央の階段から、フライブリッジや操船席にアクセスすることができる。デザイナーズマンションのような雰囲気だ。
トランサムを開放すると、スーパーヨットの世界でトレンドになっている、ビーチモードをほうふつとさせる空間が現れる。PWCやテンダーを積んでおくこともできそうだ。
船体の中央、ワンフロア上がった場所(2階?)には、マスターステートルームが配置されている。階下には、トイレ&シャワールームが見える。
左舷側のVIP向けステートルーム。外側に足を向けるような形でダブルベッドが設置されていて、大きな窓からは自然光が取り込まれている。
右舷側のVIP向けステートルーム。こちらは前後方向に2本ベッドが配置されている。
↑↑公式動画はコチラ
この超未来型トライマラン「ハンスタイガーX1」は、大変な反響を呼んだものの、当初の予定どおり3隻しか建造されないという。ただし、ビルダーでは「X2、X3、X4・・・はどうなるかわからない。次のニュースを楽しみにお待ちください」と話している。
次のボートが、いったいどんな姿で舞い降りるのか? しっかりと注視していくことにしよう。
(文=舵社/安藤 健 写真=Hanstaiger)
Hanstaiger X1
●全長:19.72m
●水線長:18.20m
●全幅:10.00m
●喫水:0.92m
●排水量:40トン
●セール面積:245.5㎡
●エンジン:
セールボート仕様|ボルボ・ペンタD4-300(300PS/221kw)×2
パワーボート仕様|ボルボ・ペンタIPS500(380PS/280kw)×2
※月刊『Kazi』2022年6月号に、永井 潤氏による詳細なレポート記事を掲載しています。
あわせて読みたい!
●待望の大型モデルがデビュー!|アクソパー45XCクロスキャビン