日本各地にある海峡や運河などを巡る、月刊『ボート倶楽部』の人気連載「水路を航く」。 舵オンラインでは、過去に誌面で取り上げた水路の中から、印象的だったいくつかの水路を再掲する。
第28回は、『ボート倶楽部』2020年7月号に掲載された兵庫県尼崎市の風景をお届けします。
(※本記事の取材は2020年の3月に実施しました。掲載内容は取材当時のものとなりますのでご注意ください。)
パナマ運河に思いをはせて
兵庫県尼崎市の臨海部は、満潮時の海面より水位が低い、いわゆる海抜ゼロメートル地帯だ。臨海部を流れる運河と海の水位差を調節し、フネの航行を可能にしているのが尼崎閘門、愛称は「尼ロック」。
海から尼崎の臨海工業地帯にある運河へ入るためには、海との水位差を調整できる尼ロックを通過しなければならない。ゲートを通航できる大きさのボートである限り、誰でも利用可能で、もちろんマイボートやレンタルボートでも航行することができる。
豪雨の際に海に排水するポンプ場のコントロールセンターもこの場所にあり、周囲の防潮壁とともに、災害から人々の暮らしを守っている。観音開きになるゲートの幅は17メートル。大きな貨物船が、横幅ギリギリで航行していく姿は見ているほうもドキドキする。
太平洋と大西洋を結ぶ、あの有名なパナマ運河と同じ方式のロックゲートを体験できる尼ロッククルーズ。運河の中は穏やかなことが多いため、ボート初心者でも手軽に楽しめるだろう。
(トップ画像説明)
長さ90メートル、幅17メートルの閘室(こうしつ)が二つある尼ロックは、1955年に、日本で最初のパナマ運河式の閘門として建設された
北堀運河と中堀運河の合流地点にある歩行者専用の斜張橋、であい橋。かつて近くにあったガスタンクがモチーフとなっている
両舷に緩衝材のタイヤをぶら下げ、17メートルの幅ギリギリで貨物船が進入していく。尼ロックの日中の通航量は、1時間に2隻ほど
ゲートの開閉や排水を行うポンプを操作する集中コントロールセンター。看視操作者は2人1組で、24時間体制。通航するフネを目視で監視している
通常は、二つある閘室のうち向かって右側を航行する。海から来たフネは、閘室の中で海と運河が同じ水位になるまで待ち、信号が青になってから運河へと進む。260トンの重さがある扇形のゲートは、開閉時に水流が起きにくい形状になっている
尼ロックは、新西宮ヨットハーバーからボートで10分ほどの距離。レンタルボートでも手軽に尼ロッククルーズが楽しめる
■新西宮ヨットハーバー 兵庫県西宮市西宮浜4-16-1 TEL:0798-33-0651
(文・写真=舵社/山岸重彦)
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