8月15日~18日にイギリスのカウズで開催された、ドラゴン級の「第75回エディンバラカップ2023(75th Edinburgh Cup 2023)」。ロイヤルヨットスコードロン(Royal Yacht Squadron)がホストクラブを務める、この歴史ある大会に出場したヤンマーレーシング(ピーター・ギルモア/谷路泰博/サム・ギルモア:トップ写真)は、最終レースまで激しい首位争いを繰り広げ、総合2位という結果を残した。
このレースはドラゴン級のUK Grand Prixも兼ねている。ヤンマーレーシングは今年、ヨーロッパで
ホストクラブのロイヤルヨットスコードロンは1815年に設立され、実に200年以上の歴史を持つ。イギリスの王室とのゆかりも深く、ロイヤルの名が冠されていることからもわかる通り、世界でも最も権威のあるヨットクラブの一つとして数えられている。
今回は75回目の開催ということで、例年以上に盛大な規模でのイベントとなった。レースには、地元イギリスをはじめ、ヨーロッパ各国から41艇がエントリーした。
シリーズ中には合計5レースが行われ(1レースの成績をカット)、ヤンマーレーシングは合計6ポイント(2-[6]-1-1-2)という素晴らしい成績を残したものの、最終レースを前に同ポイントで並んだイギリスの〈ALFIE〉(Lawrie Smith / Richard Parslow / Goncalo Ribeiro / Ruairidh Scott)に振り切られ、惜しくも総合成績2位という結果に終わった。
●「75th Edinburgh Cup 2023」の最終成績はコチラ
2018年からドラゴン級での活動をスタートしたヤンマーレーシング。スキッパーのピーター・ギルモア(左)は、日本からアメリカズカップに挑戦したニッポンチャレンジでもおなじみのレジェンドセーラー。チームのディレクターも兼任する谷路泰博(中央)とは、マッチレースでのキャンペーンなど、長きにわたって活動を共にしている。もう一人のメンバーは、ピーターの息子のサム・ギルモア(右)
ドラゴン級は、1929年に設計されたという長い歴史を持つ艇であるにもかかわらず、現在も世界中で多くのセーラー(1,300隻以上)が活動している。そのようなクラスは、もちろん他に類を見ない。レースには、こんな美しい木造のドラゴン級も参加している
ドラゴン級のレースイベントの多くは、単純にレースを楽しむだけでなく、アフターレースの交流の場も非常に大切にしている。その日のレースを振り返りながら、熱く語り合うことのできる素敵な時間だ
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レースを終えた8月下旬、谷路泰博氏にオンラインでお話を聞く機会を得た。終わったばかりのエディンバラカップを、あらためて振り返っていただいた。
「レース海面となったのはソレント海峡で、潮がとても強いエリアとして有名です。我々も、価格が37ポンドもする『Tide Chart』を用意するなど周到な準備をして臨みましたが、やっぱり地元のセーラーしか知らないような複雑な潮の流れも多々あります。幸いにも、ピーター(・ギルモア)の友人で、カウズでコーチを務めている人物からレクチャーを受けることができたのが役立ちましたね。強いときには3ノット以上の潮がありますから、例えばスタートをミスしてしまうと、まず上位に復活することはできないといっていいでしょう」
「ここまでの2戦をいい感じで来られていますが、今回はスタートもよかったし、内容的にも非常によいレースができました。なんといっても、ボートスピードがダントツに速いということが、我々の最大の強みですね。実際、最終レースはスタートに失敗し、20番手くらいでのスタートになってしまったのですが、このボートスピードの速さに加えてウインドシフトも味方し、第1上マークでは2番手まで上がることができました」
「この時点で、トップを走るローリー・スミスには10艇身ほどの差がありましたが、これをダウンウインドで約2艇身差まで詰めました。我々のチームは、特にダウンウインドが速く、トップスピードを長く維持することができています。また、マッチレースの世界で長く活動してきたので、対相手というマッチレースならではのテクニックを熟知していることも大きな強みになっています」
「2018年からドラゴン級での活動をスタートした当初は、2桁の順位ということも多くありました。でも、5年やってきて(途中コロナ禍があったので正味3年)、ようやくボートのセッティングもばっちり決まるようになってきて、ボートスピードでは負けない実感があります。ドラゴン級のセッティングというのは、まさに1ミリ単位でパフォーマンスが変わってしまうので、非常に難しい。リグやマストの選び方やチューニングの方法も奥が深いのですが、ようやく答えが見えてきたなという感じです。また、基本的なボートスピードが速い艇種ではないので、タッキングしたぶんだけ、どんどん差が出ていきます(1回のタッキングで約5艇身)。ハイキングストラップもありませんから、体力面でもハードな艇種といえるかもしれません」
そして気になる次戦だが、現在まさにイギリスのトーキーで開催されている「YANMAR Dragon Gold Cup 2023(ヤンマードラゴンゴールドカップ2023)」(9/9~15)に参戦中。大会名からもおわかりのとおり、このイベントには、2019年からヤンマーがタイトルスポンサーとして協賛している。150年以上の歴史を誇る由緒あるレースであり、ロイヤルトーベイヨットクラブ(The Royal Torbay Yacht Club)が主催。今回は、4大陸15カ国から、実に50チームがエントリーしている。
ゴールドカップは、レースのフォーマットも非常に特徴的だ。上下(かみしも)のソーセージコースで、1レグの距離が長く、3.5マイルほどになることもある。そして6日間のレース期間中は、1日1レースだけが行われ、カットレースのない合計6レースの得点によって競われる。
「カットレースがありませんから、例えば絶対にリコールをしないなど、当然ながら戦い方も変わってきます。潮はそれほど強くない海面ですが、ボートスピードをしっかりキープして、6レース全てでコンスタントに上位を狙っていくような作戦になるでしょう」と谷路氏は話す。
「グランプリシリーズの各大会は、さまざまな特徴がありますが、ゴールドカップはレースそのものだけでなく、ソーシャルプログラムの部分も大切にしている大会です。陸に上がってからも毎晩ディナーやパーティーが催され、各国から集まったセーラーやヨットクラブの関係者との交流が行われ、イベント全体を通してドラゴン級のお祭りのような雰囲気があります。レースはもちろんのこと、大会に参加することをとても楽しみにしています(上写真はエディンバラカップ)」
そんな歴史あるゴールドカップで、ヤンマーレーシングがここまでの好調をキープし、是非とも表彰台の一番上に上がることを期待するばかりだ。
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ゴールドカップのレース情報はもちろんのこと、ヨーロッパでの転戦を続けるヤンマーレーシングの活動は、同チームの公式インスタグラムでも、随時更新中。ぜひフォローしていただき、最新の情報を随時チェックしていただきたい。
(文=舵社/安藤 健 写真=Rick Tomlinson)
photos by Rick Tomlinson / rick-tomlinson.com
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