海上でのパフォーマンスや、快適さを保つ上では必須となるセーリングウエア。
ファッションとして楽しむ人も多く、セーラーにとっては一番身近に感じられるヨット製品の一つです。
今回は、そんなセーリングウエアを取り扱うウエア代理店という仕事の内容と、そこにかける志を紹介します。
※2024年『Kazi』1月号の特集「海で働く」では、マリン業界の中からいくつかの職種を紹介しました。その内容を再編し、舵オンラインで公開します!
シリーズの記事はコチラから!
マリンの仕事⑤|世界の海で信頼される製品を|舶用電子機器メーカー
マリンの仕事④|ウエア代理店
SAILFASTさん
今やセーリングウエア界のトップブランドの一つとなったザイク(Zhik)。ディンギー向けのイメージが強いが、近年はキールボートの世界でのシェアも急速に伸ばしている
最高のウエアをユーザーに届ける
セーリングは海上という特殊な環境で行う活動であり、それゆえにウエアの重要度も非常に大きい。そんな高い機能性を要求されることが多いセーリングウエアの中でも、確固たる地位を築いたブランドがザイクだ。
ここではザイクとその国内総代理店である、後藤浩紀さんが代表取締役を務めるSAILFASTを紹介しよう。
「ヨットの販売はしていたけど、当時はウエアを取り扱うつもりはなかったんですよね」と語る後藤さん。
転機となったのは、当時北京オリンピックのキャンペーンを行っていた後藤さんと親交があったネイサン・ウィルモットと、今ではザイクのCEOであるマット・ベルチャーからの推薦だった。
「ベルチャーたちが激推ししてくるもんだから、ザイクのウエットスーツを試しに使ってみたんですけど、あまりの使い心地の良さに衝撃を受けました。これは自分が取り扱うしかないと即断しましたね」(後藤さん)
当時はザイクの草創期で、まだ世に広く知られていなかった時代。
以降、ザイクは世界中で爆発的に普及していくこととなるが、いち早く取り扱いをはじめたSAILFASTの営業により、このブランドが日本で浸透したのは世界でもかなり早い部類だったそうだ。
同社で働く若手社員、矢野伸一郎さん(以下に写真と紹介あり)や日置賢人さんたちは、学生ヨット部時代からザイク製品のユーザー。彼らのような競技志向の強いディンギーレーサーを中心に、ザイクは高い支持を受けてきた。
月に一度、オーストラリアの本社と行う定例ミーティングの様子。副社長である奥さんの後藤陽子さんも同席して意見を交わす
店舗に在庫を多く抱えることで、オンラインで注文を受けてからの迅速な発送が可能に。発送や店内の在庫の調整も大事な仕事の一つだ
今ではザイク製品の開発の際に、セーラーとしての後藤さんの意見が求められることも多いそうだ。
「次のザイク商品がよくなるように、私も常に全力を注いでいます。私の会社の仕事は、最高だと思える商品を常にお客さんに提供し続けること。ザイクというウエアとならば、それができると思っています」と語る後藤さん。
私たちが普段使っているセーリングウエアが手元に届くまでには、こんな熱いこだわりがあるのだ。
今ではおなじみとなったザイクのキャップ。「ハーバーで多くの人が被っている光景を見ると感動します。私たちの取り扱ってる商品がこんなにも受け入れられているんだ、と実感できる瞬間です」(陽子さん)
1973年生まれ。福岡県出身。高校からヨットを始める。国体で優勝し、進学先の同志社大学でも個人選手権で優勝。モス級のトップセーラーであり、全日本選手権10度の優勝、国内最速のスピード記録(35.7kt)を保持
photos by SAILFAST
和歌山県出身。小学校からヨットを始める。日本大学ヨット部に在籍中、SAILFAST社でアルバイトをしており、卒業後にそのまま就職。「子どものころからずっと良いと思って使用していたザイクに携わることができてうれしいです」(矢野さん)
photos by SAILFAST
自社取り扱いのウエアだけに限らず、他社製品にも常に関心を持てるくらい、ウエアへの興味が必要だ
(問)SAILFAST
神奈川県三浦郡葉山町長柄888-1
TEL: 046-876-2889
https://www.sailfast.jp/
(文・写真=川野純平/舵社)
あわせて読みたい!
●12/5発売、月刊『Kazi』2024年1月号|特集は「海で働く」
●【短期集中連載】マリンの仕事③|セーリングのスペシャリスト|プロセーラー