【短期集中連載】マリンの仕事⑥|人の成長を導く航海に|帆船クルー

2024.03.01

現在の日本において、一般の方が唯一乗船することができる帆船である〈みらいへ〉。たくさんの人たちに帆船や海の魅力を伝えるべく、各種教育プログラムや体験航海──セイルトレーニングを実施しています。

帆船での航海で過ごす日常からかけ離れた時間は、多くの人の人生をより良いものに変える特別な体験となるとのこと。

そんな体験へと乗船者たちを導く、帆船クルーのお仕事について紹介します。

 

2024年『Kazi』1月号の特集「海で働く」では、マリン業界の中からいくつかの職種を紹介しました。その内容を再編し、舵オンラインで公開します!

 

シリーズの記事はコチラから!

 

マリンの仕事①|充実した海の休日を演出|マリーナスタッフ

マリンの仕事②|頼れる商品知識と品揃え|マリンショップ

マリンの仕事③|セーリングのスペシャリスト|プロセーラー

マリンの仕事④|最高の海着をユーザーに|ウエア代理店

マリンの仕事⑤|世界の海で信頼される製品を|舶用電子機器メーカー

マリンの仕事⑥|人の成長を導く航海に|帆船クルー

マリンの仕事⑦|最速の船造りへの挑戦|ボートデザイナー

マリンの仕事⑧|お客さまの愛艇を届ける|輸入艇ディーラー

マリンの仕事⑨|世界で戦うセールを作る|セールメーカー

 


マリンの仕事⑥|帆船クルー
小原朋尚さん/〈みらいへ〉

 

〈みらいへ〉では、大型帆船という環境を活かした教育プログラムを実施している。上の写真はセールを展開する参加者を、帆船クルーがサポートしている様子

 

 

帆船で人の成長に寄り添う航海を

最大で13枚のセールを展開して海を走る、全長52.16mの雄大な帆船〈みらいへ〉。
この艇上では、希望者を対象にした“セイルトレーニング”というプログラムが実施されている。

“セイルトレーニング”とは、参加者が「帆船を操船する」という普段の生活では未経験の問題に取り組み、それを乗り越えることで得られる人間的な成長を目的にした教育プログラムだ。

 

〈みらいへ〉のクルーは、参加者がこのプログラムを無事に修了できるようにサポートを行う。船長である小原朋尚(おはらともひさ)さんは「ここでの経験はその人の人生を幸せにすることができる。セーリングと帆船の持つ力を感じています」と語る。

 

 

〈みらいへ〉の操舵室にて、操船の方法を参加者に説明する

 

 

希望者は展開したセールを畳むなど、高所で作業をする“マストクライム”というプログラムも受けることができる

 

 

そんな〈みらいへ〉では今、クルーを募集している。ここではどんな人材が求められているのだろうか。

「現在は船の運行に必要な航海士や機関士、船内での食事を用意する調理師、またそれらの資格を持っていなくてもできるセーリングインストラクターを募集しています。ただ、〈みらいへ〉の船員は、“セイルトレーニング”の参加者に徹底的に寄り添える人でなくてはなりません」(小原さん)

 

逃げ場の無い海に出航し、船内という限られた空間の中で自然に対峙することで、参加者はつらい思いをすることもあるという。
この船のクルーたちは、そうした参加者の気持ちを常に汲み取り、ときに支える必要があるのだ。

 

〈みらいへ〉の若手クルーである鶴田美雪さんや萩原真綾さん(以下に写真と紹介あり)は、この船で人に接する仕事にやりがいを感じているそう。

「この船は他の旅客を扱う船以上に、ゲストに接する機会が多く楽しい仕事です。そこで関わった人たちから、自分たちも多くのことを学ぶこともできます」(鶴田さん)

「“セイルトレーニング”の参加者や、ボランティアで乗船してくれる方々など、毎回違う人たちと深く関わっていくことになり、それが刺激となっています」(萩原さん)

 

「とことん海と船と人が好きな方にとっては、これほどやりがいのある仕事はありません。帆船のことを何も知らなかった参加者が、最終的に〈みらいへ〉を操船できるようになるまでの過程と成長に寄り添える喜びは、何事にも代えがたいものです」と小原さんは語る。

 

人の成長に寄り添うことができる航海。そんな仕事に興味がある方は、ぜひ帆船〈みらいへ〉にクルーとして乗船してほしい。

 

1973年生まれ。和歌山県出身。高校時代、ヨットチームのクルー募集に応募してセーリングを始める。1993年、〈みらいへ〉の前身である〈あこがれ〉の活動に携わり、以降30年間この船に関わり続けている

 

 

群馬県出身で、海での仕事に憧れがあったという。現在の役職は甲板員。「特定の航路で毎回同じ荷物を運ぶ貨物船とは違い、〈みらいへ〉はいろいろな航路で、毎回違う人たちと航海する日々を送る。とても刺激的です」(萩原さん)

 

 

船酔いはベテランクルーでもなってしまうものなので、それでクルーになることを躊躇する必要はない。必要なのは船の知識と、海と船と人を愛する気持ちだという

 

(問)ゼリ・ジャパン
https://www.zeri.jp/miraie/

 

(文=川野純平/舵社 写真提供=みらいへ)

 

※本記事は月刊『Kazi』2024年1月号に掲載されたものです。バックナンバーおよび電子版をぜひ

 

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