特に470級の世界で圧倒的なシェアを誇る、ノースセール・ジャパン。今年の470級世界選手権では1~4、7~10位までのチームが、420級世界選手権では4カテゴリー(男子と男女混合、女子、U-17男子と男女混合、U-17女子)全ての優勝チームが、ノースセール・ジャパン製のセールを使用した。
今回はその“強い”セール、“勝てる”セールを生み出すノースセール・ジャパンを取材する。
※2024年『Kazi』1月号の特集「海で働く」では、マリン業界の中からいくつかの職種を紹介しました。その内容を再編し、「マリンの仕事」シリーズとして舵オンラインで公開します!
シリーズの記事はコチラから!
マリンの仕事⑤|世界の海で信頼される製品を|舶用電子機器メーカー
マリンの仕事⑨|セールメーカー
ノースセール・ジャパン
今現在、神奈川県・横浜市にあるノースセール・ジャパンの本社ロフトに勤務している20代の社員は2人。それが今回お話を伺った川村 岳さん(上写真)と、行則(ゆきのり)啓太さん(下記に写真と説明有り)である。
「僕は新卒で入ったわけではなくて、大学を卒業してから半年はフラフラとしていました(笑)。ノースセール・ジャパンは普通に募集が出ていたのを見て、応募しました」と川村さん。
彼のヨット歴は長く、ジュニア、高校、大学と一貫してディンギーと関わってきた。さらに現在はJ/24のチームで活動しているという、根っからのセーラーでもある。そんな川村さんの仕事場はミシンの音が響く広大なセールロフトだ。
「僕はクルーザーのセールやカバー、小物類の製作と、リペアも担当しています。いろいろな仕事を覚えなければなりませんが、先輩たちが丁寧に教えてくれますし、風通しのいい会社だと思います」
1967年生まれ。ニッポンチャレンジ(1995年、2000年)、ワンワールド、エミレーツ・チーム・ニュージーランド、アルテミスレーシングと、アメリカズカップに6回挑戦した後、2011年に入社
一方、行則さんは大学でスナイプ級に乗り、最初は自動車会社に就職。その後やはりセーリングに関わる仕事がしたいと思うようになり、ノースセール・ジャパンに就職したという。プライベートでは熱心なモス乗りで、2022年にはモス級の全日本選手権を制覇したトップセーラーでもある。そんな行則さんは普段、オフィス内でパソコンに向かっている。
「面接のときに自分からデザイナー、解析を希望しました。ノースセール・ジャパンにはセールのデザインに関わる社員が4人くらいいます。2022年4月に入社した頃は、打ち合わせで先輩たちが何を言っているのか分からないこともありましたが、今はずいぶん慣れてきました(笑)。社長とも直に話して問題を解決していけるのは、小さな事務所のメリットだと思っています」
最後に、ノースセール・ジャパンにおける“仕事のやりがい”をそれぞれ三つずつ挙げてほしいと頼んだところ、ウーンとしばらく考え込んだ2人が出した答えはひとつだけ、そして同じものだった。
「もの作りを実際に体感できる、これに尽きます!」(川村さん)
「セールメーキングもデザインも、もの作りという点では同じだと思います。そして僕らはセーラーなので、自分たちの作ったものがどのように使われているのかも想像しやすい。それが仕事のやりがいにつながっていると思います」(行則さん)
ノースセール・ジャパンのスタッフはセーラーばかりではないというが、それでもヨット乗りならより深く仕事を理解し、楽しむことができるに違いない。
「私は今、アメリカズカップ(AC)のとあるチームのための解析ソフトを担当しています。これは鹿取社長が得意としていて、日本のノースセール・ジャパンの技術力を世界に示すことができる分野です。僕自身もこの技術を高めていくことで、今後世界で勝負していきたいと思っています」。入社1年半の“未来の巨匠”は既にACを戦い始めていた!
レースならば「勝てるセールを作ること」、その思いは、お客さまと作り手は同じだ。現在セール製作部門および他部門でも幅広くスタッフを募集中!
(問)ノースセール・ジャパン
神奈川県横浜市金沢区白帆4-3
TEL: 045-770-5666
https://www.northsails.co.jp/
(文=吉田拓生 レース写真=矢部洋一 写真=吉田拓生、ノースセール・ジャパン)
※本記事は月刊『Kazi』2024年1月号に掲載されたものです。バックナンバーおよび電子版をぜひ
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